スンギはミルクティー 16
ヨンダルの車の助手席に乗っても、思い出すのは最後に話をしたあの時のこと。
眠ったふりをしないと、ヨンダルが気にするからそうしているけど、目を瞑ればあの日の事を思い出してしまう。
「スンギ、雨が降って来たね。」
「フゥ~ン。」
いつもより強く、傘に落ちるしずくで声がここえないくらい降っている雨。
私は2階に上がればすぐに自分専用の部屋があるけど、スンギはこの大雨の中をバスに乗って帰らないといけない。
「う~~ん、そろそろ帰ろうかな?」
スンギが伸びをしたら、さっき飲んだ練乳入りのミルクティーの匂いがした。
「どうかしたのか?」
「ううん?」
最近スンギが優しくなった。
どうしてなのかな?
高校生の時は『五月蝿い』だとか『関わるな』だとか言って怒っていたのに。
「あれ?雨が降ってる。ヤバいな・・・・傘を持って来ていない。」
「止むまで待ってる?」
「そうだな・・・・・・・灰皿・・・どこにあったっけ。」
「灰皿?そこにあるけど、何に使うの?」
スンギは指を2本出して、たばこを吸う真似をした。
何だか、映画やドラマで見る恋人みたいなやり取りで、私は嬉しくて灰皿の置いてある所に行って洗ってある灰皿をスンギに渡した。
「いつからタバコを吸ってるの?」
「高二から・・・・・」
意外だった。 パパから聞いていたペク家の人たちは、真面目で規則やそう言ったものを破る人たちじゃないと聞いていたから。
「フゥ~あー疲れが取れる気がする。どうかしたのか?」
「タバコを吸うと、料理の味が判らなくなるよ。それに、最近練乳の量が増えているけど・・・デブリンになるよ。」
「タバコ・・・・・止めようとは思うけど・・家では吸っていないし、じいちゃんも家の親たちも知らないから止めようと思ってるけど、止められない。うちの家の中でオレだけが不良品だからな。頭も悪いし、変人だし・・・・・・模範的人間の中にいると、タバコでも吸わないと息が詰まるよ。ついでに・・・・酒も高二から・・・・・」
どうして?
と聞いたような気がするけど覚えていない。
あの後、私が何かを言ってスンギが急にキスをした。
何を私が言ってキスをしてあんなことになったのか覚えていないけど、はっきりと覚えているのはスンギが謝って、あの大雨の中を出て行ったことだけ。
あの日から私とスンギは、顔を合わせない様にするようになった。
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