スンギはミルクティー 17
大音量のカーオーディオ。
助手席に座るミンは、カフェで会ったマリーの事を口に出すタイミングを伺っていた。
聞きたくても聞きだすタイミングが摘めず、チラチラとスンギの方を見ながらオーディオのCDを探ってはまたスンギの顔を見た。
「さっきの子が、スンギが前に好きだった子?」
「違う・・・・・・」
「違うの?」
「余計な事を言ったら、車から放り出すぞ。」
「は~い」
あの時どうしてキスしたんだろう。
いつもマリーのうるさいくらいの話を聞き流していたのに、あの日の朝は大学で会った時に、マリーがあまりにも華やいで見えた。
「タバコ・・・・・止めようとは思うけど・・家では吸っていないし、じいちゃんも家の親たちも知らないから止めようと思ってるけど、止められない。うちの家の中でオレだけが不良品だからな。頭も悪いし、変人だし・・・・・・模範的人間の中にいると、タバコでも吸わないと息が詰まるよ。ついでに・・・・酒も高二から・・・・・」
「悪い子ね、マリーがこの口に甘ぁ~い練乳を入れちゃうぞ~」
マリーの明るい瞳が大きく見開くとイタズラな猫が、ヒョコッと顔を出したみたいにスンギの目の前に現れた。
「何だよ。」
「ほら、口を開けて。特別にスプーン一匙(さじ)入れてあげる。」
マリーの目から自分の目が離せない。
朝、会った時に初めてまともにマリーの顔を見たような気がした。
「どうしたの?」
マリーの顔が近づいた時、スンギはマリーのその綺麗な唇が急に気になった。
初めて触れたマリーの唇は、甘い練乳の味がした。
甘くて柔らかでもっともっとその感触を知りたくなった。
「・・・・・ンギ・・・・・・」
マリーが声を出して初めて何をしていたのか気が付いた。
「ゴメン・・・・・キスするつもりはなかった・・・・・・気にするな。」
「スンギ・・・・・・」
マリーはオレの事を好きだといつも言っていた。
あのよく動く唇からはいつもオレの名前を呼んでいた。
「どうして謝るの?」
「お前が誤解するから。さっきも言ったけど、オレはペク家の不良品だからな。だからお前が好きでもオレに期待するな。」
スンギはカバンの中に机の上に置いてあったノートやペンを片付け、強い雨が降る外に飛び出した。
訳が判んないよ。
マリーがオレの顔を見て、何かを期待するように笑っている顔を見ると、イライラとしてくる。
天才の父とその血を受け継いだスンハ姉さんスンリ兄さんスンミ姉さんにスンスク兄さんは学年トップから落ちたことが無かった。
小学生の双子の弟と妹でさえオレよりも勉強が出来るかも知れない。
そんな中での出来損ないの自分に近づいてくる女達は、あの有名なペク家の一員に近づきたいと思っている下心がある奴ばかり。
マリーにしたって、おじさんとオレの両親もよく知っているからその関係での繋がり。
特別な感情もないのに、キスをしてしまって・・・・・・
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