スンギはミルクティー 18
「まぁまぁまぁ、ずぶ濡れじゃないの。どうしたのよスンギ、ギドンおじいちゃんの店に行ったのじゃないの?」
頭から滴り落ちる雨雫が床にポトポトと音を立てて落ちていた。
グミはスンギにバスタオルを渡そうとするが、それを受け取ろうとしなかった。
「風邪を引くじゃないの。親が仕事でいない時に子供を預かっている私としては、風邪を引かせるわけにはいかないわ。ほら、ちゃんと拭いて!」
スンギはそのバスタオルを掃った。
「いいって!ほっといてくれよ!」
スンギのその声は大きくて、ダイニングにいたスングとスアと部屋からミラが使った食器を持って出て来たスンスクが驚いた顔をした。
「子供じゃないから、風邪を引いてもおばあちゃんを責めない。風呂に入って来るから・・・・・」
自分の訳も判らないイライラで、祖母のグミに大きな声を挙げた事にさすがにその態度に胸が痛ん
だ。
グミはそんなスンギの後ろ姿を見ながら怒る事もしないで、信じられない程に嬉しそうな顔をしてい
た。
「お祖母ちゃん、どうして怒らないで笑ってるの?ショックで笑えなくなったの?」
「逆よ。」
「逆?」
「そうよ、スンジョもウンジョもあんな風に反抗的な態度を取ったことが無かったから、反抗期の男の子と接触したことが無いからうれしくて・・・・・あ~あこれで普通の母親が体験する事を何年もかかって出来たって。」
意味の解らない祖母の話に、双子たちは頭をかしげていた。
何も考えないでただボウッとして熱い湯船につかっても、思い出すのは不意にしてしまったキス。 理由もなしにしたつもりでもないけど、理由を聞かれても判らない 風呂で身体を温めて出てくると、スングが夕食の準備が出来ている事を伝えに来たが、スンギが怒っていると思って走って自分の部屋に入って行った。
ここの所、祖母のグミや母ハニに意味もなくイラついた気持をぶつけていた。
ダイニングテーブルの上には温められた夕食。
「いただきます。」
「お替わりあるからね。」
「・・・・・・」
グミは何事もなくいつも通り片付け物をしているが、素直に『さっきはごめんなさい』とスンギは言
えなかった。
高校の頃から自分に自信が無く、隠れてアルコールや喫煙をしていた。
勘のいい父なら気が付いているはずなのに、注意をしたり怒ったりしない事にまたスンギは自分がペク家の子供の中で疎外されているように感じていた。
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