スンギはミルクティー 21
お父さんは見て見ぬふりをしていた。
いい事だと思わないといけないのだろうけど、そんなお父さんの気持ちがすごく負担に感じる。
そんな風にオレが思っている事を判っていますか?
冷静に自分の妻だけじゃなく、子供たちを見ているけど、時にはよその親みたいにぶん殴って叱ってください。
そうすれば、少しは素直になって心から笑うことが出来るのに。
「スンギ?お父さんは書斎にいるの?」
「えっ?ああ・・スンスク兄さん・・・・ミレがどうかしたの?」
スンスクの腕の中で眠っている姪のミレ。 義姉のミラは二人目の子供を妊娠中だ。
重い病気で、日々弱っている義姉の代わりに、スンスク兄さんは大学の勉強と子育てもしている。
スンリ兄さんとは全く違った性格で、大人しくて優しすぎる兄さん。
「どうもしないけど、明日ミラの検診だから、予約時間の確認に来たんだ。」
ほぼ寝たきりの義姉は、特別枠の検診で病院の各診療科の先生が集まって診察をしている。
スンスクがスンジョと話している事が聞こえるが、スンギは自分の心のこの訳も判らない気持を誰かに聞いて欲しかった。
誰に聞いてもらえばいいのかさえ、今のスンギには判らない。
子供自身の悩みは子供自身で解決方法というのが、スンジョの考え。
「お父さん・・・・・・お父さんと話したい・・・・・」
マリーからは何もメールが来ないし電話もかかって来ない。
キスをしてしまったから何も連絡が無いのだろうか?
昨日まで・・・違う今日のあのキスの前ではやたらとメールをして来たのに、謝ったのに許さないつもりだろうか。
「スンスク!気にしないで大学の講義を受けてもいいからね。」
「はい、ありがとうございます。」
書斎からスンスクが出て来たのが、二階のフリースペースにいるスンギにも判った。
両親に対して、一度も反抗的な事をしたことのないスンスク。
それもスンギには重い負担になっている。 二階の手摺から顔を出して、スンスクに呼びかけた。
「兄さん、ちょっといい?」
「いいよ。ミレを寝かしてからそっちに行くね。」
家に帰って来ても、色々な装置を付けているミラの為に、あまり部屋から出て来ない。
凄くミラを愛しているんだよね。
高校生の時に、すでに病気を持っているミラと結婚を決めて、もうすぐ二人の子供の父親になる。
病気もかなり悪くて、ミラの手を握って泣いている姿を見たことがあった。
「悪いね、待たせて。」
「こっちこそ、聞きたいことがあって・・・・」
ニッコリと笑ってスンギの顔を見るスンスクは、心が綺麗なことがよく判るような笑みだ。
姉のスンミと歳が近いから、一番二人は仲がいいがスンギはスンスクが優しいから小さいころから好きだった。
「ミラ義姉さんと、初めてキスしたのはいつ?」
結婚をしているのだし、子供もいるのだからこんな話をしたってかまわないよね。
「え!・・・・えぇっ・・え・・」
真っ赤な顔をして困った顔をしているスンスク。
平気な顔でキスの話が出来る兄ではないが、気持ちを切り替えてスンギの目をまっすぐに見た。
「ミラも誰も知らないけれど・・・・高3の時・・・入院中のミラの寝ている時に、病室で・・・・でも、どうしてそんなことを聞くの?」
「・・・・マリーにキスをしたんだ。兄さんみたいに好きだとかじゃなくて、ただ何となく・・・・悪いと思ったから謝ったけど気分がスッキリしなくて・・・なんかもっと先に行きたい気持ちも起きて・・そんなことを考えたらイライラして来て・・・」
「マリーが好きなんだよ。こういった話はスンリ兄さんが一番いいんだけど、電話を掛けるのもアレだよね。」
マリーが好き・・・・・
「スンリ兄さんが言っていた。好きだからもっと先に行きたいと思うのは間違い。その先に行きたい気持ちもあっても、そこで止めることが出来ればその女の子が好きなんだって・・・・・と言っていたよ。好きだからスンギはマリーにキスをしたんだよ。マリーは嬉しかったと思うけど、スンギは謝ったらいけなかったな。」
「どうして?」
「だってさ、マリーは本当にスンギの事が好きだったみたいだよ。謝ったことを謝る必要もないけど、好きなら好きだと言った方がいいよ。」
物静かな兄さんがこんな風に話してくれて、気持ちが晴れたような気がする。
明日、おじいちゃんの店に行って、マリーを呼び出してどこかで話してみよう。
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