スンギはミルクティー 26
「スンギ?」
「なに?」
「私のマンション、通り過ぎたわ。」
オレは何を考えていたんだ。
マリーと久しぶりに会って、その時のタイミングが悪かった。
マリーが彼氏からプロポーズをされている最中だった。
それに応える言葉まで聞いて、二年ぶりに会うマリーはショートカットのライトブラウンの髪が肩よりも長く伸びていた。
ショートカットにしたのは高校の時にこっちに来てからだと言っていた。
幼い頃は絹糸のように細くて綺麗な長い髪の毛がサラサラとなびいていた。
ミンが部屋の鍵を開けると、ペアのスリッパが並べられていた。
この部屋に上げるとる物すべてがペアの物ばかり。
まるで新婚夫婦のようなこの部屋の中の品物。
二人がけのソファーにいつも通り座ると、当たり前の様にミンがスンギに抱き付いて来る。
いつもならそのまま・・・・・が当たり前で、ミンの部屋を出るのが夜中過ぎは良くあった。
「口紅・・・・拭いて・・・・」
「ゴメン・・・はいティッシュ・・」
口紅のベッタリ付いた唇は好きではない。
マリーは口紅を昔と変わらず付けていなかった。
あの男とキスをしたのだろうか・・・・
ミンとのキスでマリーを思い出したことなどなかったのに、たった一回だけのマリーとのキスの感触を思い出していた。
「私達、結婚しない?付き合い始めてもう二年よ。好きな女の子に振られたって言っていたあなたを癒したのは私よ。」
まだオレは大学3年だ。
結婚なんて一度もまだ考えたことが無い。
「私、あなたより年上だし、早くしないと出産年齢も・・・・・」
スンギはミンの身体を離して、ソファーから立ち上がった。
「んもぅ~何よ、今まであなたが浮気をしても、私はなにも言わなかったけど・・・なに?さっきのハーフの女が好みなの?」
「マリーはクオーターだ。」
「どっちでもいいじゃない。」
スンギはズボンのポケットの中の鍵束を取り出して、一つそこから外した。
「スンギ?」
「もう、会わない。」
「どうして?」
「結婚はしない約束で付き合っていたはずだ。お互いそう言って付き合い始めたし、オレの方が年下でだと言う事も判っていただろ。帰るよ・・・・・・・」
オレだけペク家の中では出来損ないの不良品。
高2からたばこは吸うしアルコールも飲むし、頭も悪ければ女癖も悪い。
顔は悪くはないが、お母さんに似ているから女っぽい顔だ。
軽そうに見えるスンリ兄さんは、ソラ義姉さん意外とは深い付き合いもしたことはないはず。
どうしてこうなったんだろう。
マリーと高校の時に再会してから悪くなったわけじゃない。
その前から、いつも毎日がつまらなくて、悪い事をしたくなっていたのかもしれないが、マリーと別れてからもっと酷くなった。
お父さんは、何も言わない。
悩みがあっても助言はするが助けはしない。
自分で乗り越える事を子供にさせている。
お母さん一人がオレを見て泣いている。
どうしたらこのイライラやつまらない毎日から抜け出せるのか。
マリーのあの笑顔に会いたい。
0コメント