スンギはミルクティー 34
マリーの家に来た時はプロポーズをされたお祝いだと思って来たスンギだったが、大袈裟にジュングがハニに電話を掛けただけで、何のお祝いなのか不思議だった。
プロポーズは断ったと言い、マリーの誕生日はまだ先。
公園から家に帰る途中で、スンギはマリーに思い切って聞いてみた。
「何のお祝いだったんだ?てっきりオレはプロポーズをされてそれを受けたことのお祝いだと思っていたが・・・・・・・」
「大した事じゃないの。私がパパに初めてのバイト代でネクタイを買ったの。そのお祝いよ。叔母様に言っておいたのに聞いていなかった?おば様にもちゃんと言ってあるはずよ。」
本当に大した事のないお祝い。
ペク家ではそんな事でお祝いはしないが、そんな小さな事もお祝いにしてしまう。
そんな賑やかな家で育ったからマリーはいつも笑っていたのだった。
「明日・・・・」
「明日ね・・・・」
玄関で手を振って、スンギは両親とポン家の家を後にした。
マンションの外に出ると、星空がいつもより澄んで綺麗に見えた。
こんな風に夜空が綺麗だと思ったのは、小学生以来。
「スンギ、乗って行くだろ?」
父の車の所まで来た時にそう聞かれた。
「はい。」
今までなら、父と一緒の空間にいる事が苦手だったが、マリーと誤解を取ることが出来たからなのか、素直に応えることが出来た。
「スンギ、何の話をして来たの?」
「話をしていたって分かった?」
「お母さんは二人を信じているから。」
バックミラー越しに見える父の目が笑っている。
その目は、スンギがひとつ前に進む事が出来た事を喜んでいるように見えた。
スンジョは自分と似た性格の息子が、素直に思いを伝える事が出来たのが嬉しかった。
スンギが両親の後姿を見ながらこの両親は一見釣り合わない二人のように見えるが、世界一釣り合った二人だと思った。
「お父さん、オレ・・・・じいちゃんの店の後を継いで行ってもいいかな?」
「スンギ・・・本当にそうしてくれるの?」
「お母さん、いいかなぁ・・・・・」
「勿論いいに決まっているわ。おじいちゃんも歳だし、店を売りに出そうとしていたから、スンギがおじいちゃんの後を継いでくれるのならきっと喜ぶよ。」
「お父さん・・・」
母がいいと言えば、よほどの事が無い限り父は反対しない。
「料理人になるのか・・・・それなら、甘いミルクティーもタバコも酒も考えないといけない。」
「止めます・・・・全部は・・・無理かな・・・・・」
料理人になるには味覚が必要だ。
甘過ぎはダメだし。
「全部は止める事が出来ないかもしれないけど、じいちゃんの店で修業をして、独り立ちが出来る様になったらマリーと結婚したい。」
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