あなたに逢いたくて 36
キム先生と結婚した方が、おばあちゃんに言われたとおり、幸せなのかもしれない。
スンジョ君には、いつも走って後ろを付いて行かなければならなかったから。
走っても走っても追いつけないから、本当に自分の持っている力の何杯も努力をして付いて行っていた
やっと追い付いて、一緒に歩けると思ったけど、結局一緒に歩く事は叶わなかった。
スンジョ君はヘラと婚約をして・・・ううん、もう結婚しているかもしれないし、子供が出来たかもしれないから諦めないといけない。
でも、毎日スンジョ君とよく似ているスンハを見ていると、キム先生とのことを考えると言う決心がつかない。
もう誰も好きにはならないしなれないから、自分で買った結婚指輪をはめた。
私の心はスンジョ君以外に向く事は、今までも無かったしこれからも向く事は絶対に出来ないから。
こうして、毎日キム先生に勉強を見てもらうと、高校生のあの頃をいつも思い出してしまう、
「ハニさん・・・・集中してくださいね。」
「ごめんなさい。私は、30分が限界みたい。」
「それでは、今日はこの辺でやめましょうか?ハニさんは勉強のポイントをしっかり理解されているから、短い時間でも頭に入ってますね。」
スンジョ君は、冷たい視線で許してくれなかった。
あの頃に教えてもらった、勉強の仕方はずいぶん役に立っているみたい。
キム・ジョンスは、ハニが解いた問題を細かく一つづつチェックしていた。
「先生、コーヒーを淹れたので飲んでください。」
「ありがとうございます。ハニさんが淹れてくれたコーヒーは本当に美味しいですね。なんだか癒されるんですよ。」
ジョンスがホッとしたような顔をして、ハニのコーヒーを美味しそうに飲んでいる様子を見てスンジョを思い出した。
スンジョが「ハニの淹れたコーヒーは誰も真似できないほど美味しい」と言って、一口飲んでキスをしてくれた。
コーヒーの味がしたスンジョのキス。
今も、忘れる事が出来ないスンジョとの思い出。
胸がチクチクと痛くて涙が出てきそうだった。
「そうだ。これを明日、学校に行くときに出してください。これを提出すれば、実習も半分くらい免除されると思いますし、通学も減って楽になると思います。」
「ありがとうございます。」
「通学の為に診療所を留守にするのも減るし、その分スンハちゃんと一緒にいる時間が増えると思います。」
ハニはジョンスの心遣いが嬉しかった。
その純粋に自分を想っていてくれる気持ちを、素直に受けてもいいのか迷ってもいた。
大きな嘘を付いている自分に、下心なしで本当に尽くしてくれている。
「オンマァ~オンマァ~」
昼寝から起きて泣いているスンハの声が聞こえた。
島に来てからすでに一年、スンハが産まれていつしか8ヶ月が経っていた。
スンハはスンジョに似たのか、とても育てやすく頭もいい子供だった。
父親がいなくても、ジョンスや島の人々がとても可愛がり愛情一杯育ち、とてもかわいらしい笑顔の女の子だ。
「ほらほら、キム先生。ハニを独り占めしないでスンハにハニを返しておくれよ。」
「ギミさん、そんな独り占めだなんて・・・・・・・」
「そうだよ、おばあちゃん。キム先生にそんなこと言って苛めないでよ。ただ勉強を教えてもらっただけだから・・・・スンハ、おいで・・・・・もうお勉強は終わったから。」
ギミに抱かれたスンハが、小さな手をいっぱいに伸ばしてハニの首にしがみつくように抱きついた。
その様子を、幸せそうに見ているジョンスに気付いたスンハが、ジョンスの方を向いて突然嬉しそうな笑顔を向けて大きな声で叫んだ。
「アッパァ~」
今までオンマとしか言ったことがなかったスンハの一言・・・・・・・
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