スンギはミルクティー 36
鳥のさえずりが聞こえ始めた頃に、キッチンに立ってグミとハニはいつもの様に談笑しながら朝食の用意をしていた。
スンギが生まれた頃は、まだウンジョ家族も一緒に住んで女さんにの笑い声が聞こえていた。
「自分は会社を継いだから、この家は兄貴が継いで行ってくれないか?中堅の玩具メーカーを大きくした親父の会社をオレが守り、兄貴は長男だから親父が大切にしていた家族が寛ぐこの家を守って行ってくれないか?」
ウンジョ家族が家を出て行っても、スンジョの子供たちが成長して更ににぎやかなペク家だった。
長女のスンハが今は二人の子供の母になり、スンリも結婚をしてワン家で生活をし、スンミはスンリの友人の医師のヒョンジャと一緒にアフリカに渡ってから母になり、今一緒に住んでいるのはスンスクとその妻ミラと子供のミレ。
気が付けば活動的なグミも最近は時々疲れた顔をし、娘の様に若かったハニも腰が痛いだとか言い、お互い子供の成長と共に親になったオレ達もいつしか親父の亡くなった年齢を越している。
「スンジョ君、お待たせ・・・・・何?そんなに見られたら照れちゃう・・・・・・」
「どうしたの?あらあらあら・・・・・・ラブラブ光線が朝から?いいわねぇ~いつまでも新婚で・・・・・・」
「お母さん・・・私達、孫もいるのに新婚なんて・・・」
「孫と自分の子供の年が一緒じゃないの。」
こんなお袋とハニの会話にスンギが結婚したらマリーが加わるのか。
一体いつになったら静かにハニと二人で過ごせるのか。
「お父さん、おはようございます。」
「ああ、おはよう。なんだか今朝は明るい顔をしているな。」
スンジョはグミに気づかれないように、新聞を読みながらスンギに話をした。
「あれから、煙草もビールも部屋に入ってから飲んでない。料理人になるには煙草もアルコールも良くないし・・・・・・・マリーとの将来を考えて、今までの考えを正すことにしました。」
スンジョは何も言わず、スンギの背中をポンと叩いた。
口で言えば簡単だが、スンギは小さい頃からスンハやスンリのにぎやかな会話に押され気味だった。
突き放すような言い方をするスンジョの言葉はスンギを委縮させてしまうから、黙って見ていて、道を外れてしまいそうな時になったら止めるつもりだった。
自分で気が付いてくれればそれで良かった。
親として出来る事は、傷付いた子供が帰って来た時に温かく迎えてあげる事。
ハニには容易なことだがスンジョには容易ではない。
自分で解決策を見つけることの出来るスンギは、スンジョが愛しているハニと似ているから大丈夫だろうと思っていた。
「スンギ、ご飯食べないの?」
「ん・・・・あ・・・一緒に食べる人がいるから。」
スンジョはそれがマリーだと直ぐに判った。
それなのに、昨日の事を知っているはずのハニはしつこく誰と食べるのかと、締まった玄関に向かっ
て言っていた。
「ああいう所・・・スンジョ君と似ているんだから・・・・人を馬鹿にして・・・・・」
「お前に似ているよ。」
「どうしてよ!この間スンジョ君、スンギは自分に似て、素直に言えないからって言っていたじゃない。」
「それはそうだけど、ハニと一緒で好きな人の声しか聴けないみたいだから。」
赤い顔をして反論しようとしていたら中学生になったスングとスアが起きて来て話はそこで終わっ
た。
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