スンギはミルクティー 38
バンッ!!
ドタドタドタ ドンッ!
バタンッ!!!
「何、今の・・・・何かあったの?」
「さぁ・・・・・玄関のドアが開いたのだけど・・・・・スング、ちゃんと閉めたの?」
「閉めたよ、おばあちゃん。」
確かにドアが開いて、誰かの足音がしたのは事実だが、ハニもグミも勿論そこにいたスングも姿を見
ていなかった。
「オンマァ~二階のトイレに誰か入っているんだけど、出て来ないの。私・・・・トイレに入りたいのだけど・・・・」
「一階のトイレを使ってもいいわよ。」
子供の多いペク家の長男夫妻。
トイレが常に使用中になっている事は無かったが、人影も見ないのに使用中になったことが不思議だ
った。
ハニやグミそしてスングやスアが不思議そうな顔をしているが、スンジョ一人だけ笑いをかみ殺して
いた。
クソッ!
我慢して食べたのが悪かったか・・・・・・・・死にそうだ・・・・・・・
ジャー
バタン・・・・・
「スンギ・・・・これを飲んでおけ・・・・・・」
リビングで本を読んでいたスンジョは、疲れ切った様子のスンギにそれを渡した。
「お父さん・・・・」
「消化不良の薬と整腸剤だ。」
「あ・・・・・ありがとう。」
スンジョは、ゲッソリとした様子のスンギに小さな箱を渡した。
「あ・・・ありがとうございます。」
スンギはキッチンに行ってスンジョから貰った薬を飲み、フラフラとしながらスンジョの向かい側に
座った。
まだ痛みがあるのか、時々辛そうにしている息子の顔をチラチラとスンジョは見た。
「マリーの手料理か?」
「お父さん・・・・どうして・・・・・」
「医者だからな・・・外科医でも判るよ。」
「見た目は良かったけど、ひどかったよマリーの作った食事は。」
「見た目がいいのならいいが、どこかの女性は見た目も酷い。変わり者しかその人の作った食事は食べられないな。」
スンギは父の視線の先にいる母を見た。
以前から、スンギは朝食後に薬を飲んでいる父の姿を時々見ていた。
どこか病気でもあるのだろうかと、気にはしていたが誰が見ても健康そうな父だった。
「スンギの聞きたいことは判るよ。一生懸命に作ってくれたから、言えなかったんだろ?」
「うん・・・・中心まで火が通っていなかった。ハンバーグの中心が生肉で、里芋は生煮え、豆サラダも生・・・・・・最悪だった。」
「ハンバーグの生煮えならいいが、ハンバーグの炭は食べられないぞ。」
スンギは朝食をマリーが作ってくれた食事で空腹を満たしたが、昼過ぎから腹痛が続き半日は苦しみながら講義を聞いていた。
今までのスンギなら、相手の気持ちを考えずに『不味い物は不味い』と言っていたが、マリーの事が好きだと判ったらとても言う事が出来なかったのを後悔していた。
0コメント