スンギはミルクティー 40
スンギの下痢は夜中まで続いた。
何度目かのトイレに行った後、スンギは水を飲むためにキッチンに行った。
「もう大丈夫か?」
誰もいないと思っていたキッチンの入り口にスンジョが立っていた。
「お父さん・・・・・」
「食中り(しょくあたり)は辛いな。明日一日は軽い食事にしておけよ。」
聞いてみようか・・・・・お母さんのあの悲しそうな顔が忘れられない。
「何か聞きたいことがあるのか?」
お父さんはこちらが言わなくても、心の中で言っているのが判るように思うことがある。
「あの・・・・お父さんは結婚するまで付き合った人はいるのですか?」
一瞬変わった父の表情に、スンギは聞いてはいけなかったのかと思った。
「付き合った女性はいない・・・・・・」
「お母さんただ一人だけですか?」
「いや・・・・・お母さんとも付き合っていない。」
「付き合わないで結婚したんですか?高校三年の時より一緒に暮らしていた事は知っていたけ
ど・・・・・」
「もうスンギにも話してもいいか・・・・・・座って話そうか?」
父に続いてリビングのソファーに座ると、スンギは妙に緊張した。
滅多に見せない父の表情が、遠い何処かを見ているような悲しい目をだった。
「昔・・・丁度スンギと同じ年の頃、おじいさんが倒れたんだ。その頃は会社の経営も思わしくなく、それも倒れた原因かもしれないが、お父さんが医学部に編入する事を言ったのも原因の一つ。」
「医学部に行くのは反対されていたのですか?」
「ああ・・・・自由専攻学部から経済学部に行くことをおじいさんは望んでいた。おじいさんの後継者になるはずの長男であるのに、学部変更で言い争いになって倒れた。開発中のゲームの発売も行き詰まり、資金に行き詰まり・・・・このまま行けば会社は倒れるかもしれなかった。会社の為にお父さんは見合いをした・・・・・・・一番嫌いな方法で。」
チラッとスンリ兄さんが結婚する時にお父さんと話しているのを聞いた事があった。
ソラ義姉さんのお母さんと見合いをしたと。
「お父さんは、お母さんの事が好きだった事を知らなかったんだ。同居したころから好きだったと気が付いたのは、お母さんが・・・・・・・プロポーズをされと聞いた時だった。」
「誰にプロポーズをされたんですか?」
それまでと奥を見ていたスンジョは、正面に座るスンギの目を見た。
「ポン・ジュング・・・・・」
その名前を聞いて、驚かない方がおかしい。
ポン・マリー・・・・マリーのお父さんだから。
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