スンギはミルクティー 43
バン!
ドアを勢いよく開けて、床をドスンドスンと音を立てて歩く。
「じいちゃん、ビール!」
「悪いなぁ、うちは昼間は酒は出していないんでね。ほら、水を飲みな。」
「いらないよ、水なら。」
スンギは弁当の事でマリーと喧嘩をして、言い過ぎたとは思ったが自分の方から謝る気は無かった。
ポケットの中のタバコを探るが、いつもは入っているのに、昨晩にマリーとの将来を考えてタバコもアルコールも止めると誓ったことを後悔した。
「お母さんから聞いたよ。スンギがこの店を継いでくれるんだって?」
「あぁ・・・・・・いいかなぁ・・・・」
「いいけどな・・・ただ・・」
「ただ?・・・」
ギドンとスンギはよくこうして向かい合って座り、学校で苛められ傷ついて泣きながら、祖父の作った試作品を食べていた。
「スンギ、じいちゃんは今のお前をこの店の後継者には出来ん。お前みたいに怒りっぽくては、料理にその心を写してしまう。例えば、一度目はスンギの未熟さだと思って常連さんなら許してくれるかもしれないが、来るたびに味が違うと言われたら店の評判にも差障る。料理をするのが好きなのだから、人が作った物はどんなにまずくても有り難く頂くんだ。」
オレだって反省はしているよ。
ちょっと言い過ぎたって。
「マリーが今度は自信があると言っていた。伯父さんと一緒に作ったのだから、一口食べてうまいかまずい決めればよかった。」
じいちゃんは昔からオレの事をよく見ている。
謝ろう。
謝らなければ。
つまらない事で喧嘩をして、また荒れた生活に戻るわけにはいかない。
苦手な料理をマリーはオレに食べさせたくて一生懸命に作ったのだから。
携帯の画面を睨んでいたスンギは、素直になってマリーに謝ることを決めた。
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