スンギはミルクティー 45
う~寒っ・・・・・・ マリーが一方的に電話を切ってから5時間。
マンションの住人は、植え込みの縁石に座ってマリーの部屋の方を見ているにスンギを不審者でも見ているような目を向けていた。
ひとつの部屋の窓から目を離さない姿を見れば、その人がどんな人でも不審者と通報されてもおかしくないかもしれない。
金髪に近い茶色の髪に染めた遊び人風の男が、高級マンション前の植え込みの縁石に長い時間雨に濡れてそこにいるのだから。
「スンギ君?」
マリーとよく似た声がして振り返ると、マリーではなく母親のクリスと父親のジュングが立ってい
た。
「ずぶ濡れじゃないか・・・中に入らないで何をしているんだよ。」
「マリーは家にいると思うけど、会いに来たんでしょ?イギリスからジョージも帰って来ているし、久しぶりに話でもして行かない?」
「いいです・・・家に帰りますから。マリーに・・メールすると伝えてください。」
傘を貸してあげるからと言って呼び止めようとしているマリーの母親の声に、それを断り逃げる様に家に帰ることにした。
頑固で意地っ張りなマリーを説得する事なんて、スンギには無理だと判っていた。 判っているが、今回はそんなことで諦める気持ちは無い。
雨に濡れた服は重く冷たい。
寒っ・・・・親父に迎えに来て貰うか・・・
「ただいま。」
「お帰りなさい、お兄ちゃん起こさないで寝かせてって言ってたよ。」
「そう・・・そう言えばスンギ君が外にいたけど変なのよ。家の前にいるから入ればいいのに、メールをするって言っただけで帰っちゃった。」
「いいのよ、放っておいたって。」
5時間も雨の中私を待っていてくれたんだ・・・ずぶ濡れって・・スンギは傘を持っていなかった。
「マリーどこに行くの?すぐにご飯が出来るよ。」
「ちょっと出かけるね。パパの傘を貸して・・・・」
マリーは母たちに声を掛けられても振り返ることなく家を出て行った。
バカ!私が電話を切って5時間も雨の中で待っているなんて。
病気になったらどうするのよ。
強い雨で前がよく見えない。
朝スンギと会った時の服を思い出しながら、どこかにスンギが雨宿りをしていないかと探しながら歩
いた。
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