あなたに逢いたくて 38

「この話は、僕があまりにも気弱で大学受験の勉強で悩んでいた時に、母方の祖母から聞きました。どんな思いで母が僕をこの世に残したのか、父はどんな思いで僕を見ていたのか・・・・・僕が、自分の進む道は何処なのか・・・・大恋愛でもないのに母だけを愛した父は、家業を継がなくてもジョンスが好きなことをしなさい、そう言いました。僕は、父が患者にいつも診察の後に言う言葉<無理はしないでください>が好きでした。<欲張らないで一つづつ自分に合わせて過ごしてほしい>という意味で父は言っていたそうです。」

キム先生の話を聞きながら、ハニは理解は出来ないが心打たれる一つ一つの言葉に、キム先生の外見とは違い、優しく人を安心させてくれる大きな心を感じた。

「ハニさん・・・・・」

「はい。」

「無理して、僕との結婚を考えなくていいですよ。ハニさんが亡くなられたご主人に対してまだ気持ちがあるのに、ギミさんが何を言おうと僕のことは本当に気にしなくていいです。スンハちゃんは大人たちが<キム先生がアッパだといいね>と言っている言葉で僕の事をアッパだと思っただけだと思います。」

ジョンスの決して自分の思いを人に押し付けないところは、なんだかスンジョの自分の思いを閉じ込めているところと似ているような気がした。

「ハニさんの亡くなられたご主人はどんな方だったのですか?」

えっ・・・・・・・

「いや・・・いいです・・・・・ハニさんが忘れられないくらいの方なのできっと素敵な方だったのでしょうね。さあ・・・・そろそろ診療所に戻りましょうか?」

「心を閉ざして、人を信じることが出来ない・・・知らない人から見ると冷たく感情がない人・・だけど誰よりも本当は優しくて、淋しがり屋で、見つけられない自分の夢をずっと探していたの。」

ハニはスンジョの思い出を話し始めた。

そうしていると辛いことを忘れることが出来るような気がした。

話してもいいよね?

私とは終わった関係でも、私はスンジョ君を忘れる事が出来ないし、私はスンジョ君しか愛せないのだから、勝手に想いつづけていてもいいよね。

まだスンジョ君の何気ない仕草や、肌に触れた感触にサラサラとした髪の毛。

黒曜石のように黒い大きな瞳で私を見つめてくれた。

鼻にかかる甘い声で耳元に囁くと、くすぐったくてよく笑っていた。

何一つスンジョ君との思い出をまだ一つも忘れる事が出来ない。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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