スンギはミルクティー 47
「ママ、お風呂にお湯を張って!」
「いいよ、シャワーで。」
「だめ!雨の中に5時間もいたのだから、しっかりと身体を温めないと!ママ、ママ!」
玄関から叫んでいるマリーの声に、クリスとジュングが慌てて出て来た。
「何事なの・・・まぁ・・・スンギ君・・マリーが見つけて連れて来てくれたのね。ほら、パパ!ボウッとしていないでタオルを持って来て。」
「ペク家の男は根性が悪いから、濡れていたって大丈夫だ。」
「何を言っているの。どうしてあなたはいつまでそう言う言い方をするの。子供の友達に何かあったらいけないでしょう。」
マリーの母クリスは、口の悪いジュングの頭をゴツンと叩きバスルームに向かった。
「スンギ、家に電話はしたの?」
「携帯・・雨に濡れすぎて使えなくなった。」
「すぐにバスルームに行って・・・こっちよ。」
マリーに手を引かれ、バスルームに案内された。 脱衣所は暖房で温められ、バスタブに湯が入り始めたのか、湯気が立ち上っていた。
「スンギ、これお兄ちゃんの服と新しい下着・・・・・」
「ありがとう。」
「えっ?」
「えっ?」
「スンギがありがとうって言った・・・・」
「言ったよ・・・それがどうかしたのか?」
目に涙をためているマリーは、感動したようにスンギを見ていた。
「大袈裟だなぁ、たかがありがとうくらいで。」
「初めてなの、スンギがありがとうって言ってくれたの。いつも<ああ>とか<ふん>しか言わなかったもの・・・・嬉しくて・・」
そう言い終わるとマリーはずぶ濡れのスンギに抱き付いてキスをした。
「離れろ!」
開いているバスルームのドアを塞ぐように、マリーの父のジュングが真っ赤な顔をして立っていた。
「ぺ・・ぺ・・ぺペペペク家の男は・・・・」
ジュングの手が振り上がり、スンギは殴られると思い目を閉じた。 殴られると覚悟をしていた時に、状況が変わっていた。
「パパなんて・・パパなんて・・・・」
「っぅ・・・・・」
バスンと言う音がして続いて呻くような声が聞こえて来た。
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