スンギはミルクティー 48
マリーが用意してくれた着替えに袖を通したスンギは、熱い湯に浸かったのに身体が温まった感じがしなかった。
「ヘッ・・・・ヘクッション!」
う~風邪を引いたか・・・
「スンギ?大丈夫?」
「大丈・・・・ヘックシュン・・・・だ。」
バスルームのドアを開けると心配して待っていたのか、スンギの顔を見ると嬉しそうに微笑んだ。
「リビングにスンギのミルクティーを用意したよ。練乳は買っていないから無くって・・」
「いいよ。」
寒い・・・・ここが自分の家だったら、ミルクティーなんて飲まないでベッドで寝たい・・寝かせて欲しいとは言えないよな。
マリーと並んでリビングに行くと、テーブルの上にマグカップたっぷりに熱いミルクティーが入って
いた。
マリーの両親と兄のジョージが見ている中で、座って熱い紅茶を飲むのは緊張する。
小さい頃から何度も会っている人たちなのに、今の状況は妙に緊張してくる。
マリーの兄ジョージは、スンリ兄さんと歳も同じだから遊んでもらった事もある。
確かイギリスに奥さんと子供がいるはずなのに、一人で帰国をしたのだろうか。
「スンギ、随分と赤い顔をしているが大丈夫か?」
「大丈夫よね、熱いお湯に浸かったから顔が赤いだけだよね。」
「ぁあ・・・・・」
「ご飯もまだでしょ?今、ジュングが作ってくれたから食べてね。」
「ありがとうございます。」
ササッとマリーの父さんは食事を作ってくれたのだろう。
じいちゃんの所で働いていたし、イギリスとこっちで店を持っているから、さすがにプロの味だといつもそう思っていたけど・・・今日は食べられない・・・・・
「スンギ、お前緊張してるんじゃないか?」
「緊張なんてしていませんよ。おじさんもおばさんも小さい頃から知っている人だし。」
隣に座っているマリーの体温が心地よく伝わって来る。
眠りたい・・・・マリーに包まれて眠りたい・・何を考えてんだオレは。
熱でも出て来たのだろうか。
おいしいはずのジュングの作った軽食が喉を通らず、とても食べられそうもなかった。
熱いミルクティーを飲んでも身体の寒さが止まらない。
「スンギ・・・熱があるんじゃないの?」
隣で座っているマリーの手が額に触れるとひんやりと気持ちが良かった。
「マリーこっちの手も貸して・・・・」
そこにマリーの両親と兄がいる事も忘れて、スンギはマリーのもう片方の手を掴んで頬に当てた。
「おい!可愛いマリーの手を・・・・・」
ワナワナと震えているジュングの事が目に入らないのか、それとも熱が出てそこがどこであるのか判らないのかフラフラと立ち上がったかと思うとその場に倒れた。
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