スンギはミルクティー 50
スンギが倒れたという連絡を貰って、スンジョは迎えに行くために急いで家を出る事にした。
心配だから一緒に行くと言っていたハニだったが、夜の遅い時間に中学生のスングとスアを家に置いて出かける訳にはいかなかった。
グミやスンスクがいるから大丈夫だとハニはスンジョに言ったが、母親が必要な年齢のスングとスアの為に家にいる様にと言われガッカリとしていた。
車を運転しながらスンジョは38年近く前のあの雨の日を思い出した。
ハニがジュングにプロポーズをした事を知ったあの日も、今日のような雨だった。
あの日と同じように、今日も雨が降るとは思えないほど午前中はいい天気だった。
歴史は繰り返すというが、こんな親子の歴史まで繰り返すとは、縁というのは不思議なものだとスン
ジョは思った。
「結婚すると、外見が似てくる話は聞いた事はあるが、ハニと同じ考えをするようになるのだな・・・・オレも・・・・」
電話口でクリスからジュングに代わった時の父親としての慌てている声に、あの時のギドンをスンジョは思い出した。
『ハニが好きになった人だから・・・・』
その言葉をまた違った相手から聞くとは思わなかったが、義父のギドンとは違って一人娘を溺愛しすぎているジュングには、自分が相当憎いのかと思ってしまった。
勿論、娘を持つ父親としての気持ちは、考え方は違うが体験済みだ。
スンハとスンミを嫁がせる時は、口や態度で表さなかったが、自分を信頼して頼ってきた可愛い娘が、自分以外の男性との人生を選んだことを認めるのは辛かった。
まだ、中学生のスアもいずれは嫁ぐことになるが、年を老いてから授かった一番下の娘はまた違った思いになるのだろうという思いがあった。
『やっとハニと近くになれたと思う反面、ハニを奪ったペク・スンジョと親戚になると複雑だ』 ジュングが何を言いたいのかすぐに分かったが、自分の思いを素直に言う事の出来なかったスンギの根性
に脱帽した。
「5時間も雨の中を傘も差さずに待っていたのは・・・・・・・ハニに似たのだな。
オレはあの時は2時間だったから。」
スンギが倒れた時の事を、マリーの母であるクリスから聞いて、自分一人で迎えに来る事にしたのは、あの後の自分の気持ちとスンギは同じだろうと思ったから。
「おじさん、おばさん・・・・今すぐではありませんが、大学を出て社会人として責任が取れる様になったら、マリーと結婚させてください。」
「スンギ、マリーは何も出来ないぞ。」
「はい、知っています。」
「料理人の娘なのに、作った料理でスンギは腹を壊したんだぞ。」
「気にしていません。」
「頭は・・・オレに似てあまり良くない・・それに、母親似で好きになった相手には嫌がっても付いて来るぞ。」
「大丈夫です。子供の時から知っています。」
「マリーはお転婆で・・・だけど好きになった物は一生手離さんぞ。」
「最高です。」
「マリーが好きになった男だ、ペク・スンジョの息子ではなくオ・ハニの息子として・・・・マリーを大切にしてくれるのなら・・・・」
ジュングのその言葉を聞いてというより、自分の正直な気持ちを言うことが出来て、スンギは力が抜けたのか熱が高い所為なのか、その場に倒れてしまったのだ。
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