スンギはミルクティー 54
ぽっちゃりと太った4歳くらいの男の子の手を引いて、ハニとその男の子は送って来てくれたスクールバスに手を振った。
「今日も幼稚園は楽しかった?」
「楽しかった・・今日はね、オンマの顔を描く日だった。」
「フィマンはオンマの顔を知っているの?」
「アッパに写真を見せてもらった!病院でね・・・いっぱいストローみたいなのを付けていたの。」
「ストロー・・・・・フィマンにはそう見えたんだ。そうだね、オンマはご飯が食べられないから管を付けていたの。きっとその写真は、フィマンがオンマのお腹にいる時の物だね。」
フィマンを妊娠した時は、ミラは殆どベッド上での生活だった。
自分よりも若く、早婚のペク家の子供たちの中でもスンスクは一番早く結婚をした。
「あの・・・・」
「はい。」
若い女の子に声を掛けられて、ハニはフィマンの手を繋いだまま振り返った。
「まぁ・・・マリー。いらっしゃい・・・家に上がって行くでしょ?」
「でも、その・・スンギは・・」
「スンギが大学を休んだから来てくれたのね。」
活発でハキハキとしていたマリーが頬を染めて何も言わないで頷く姿を見ると、クリスがジュングを思って悩んでいた時とよく似ていた。
「熱は下がったけど、ベッドで休んでいるわ。」
ハニはスンギがマリーにプロポーズをしたことは知っていたが、スンジョからグミに聞かれるとまた勝手なことをするから言わないようにと念を押されていた。
「お姉ちゃんの目・・・・ガラスみたいで綺麗・・・」
「本当?ありがとう・・小さい子は私のグリーンの目が猫みたいで怖いと言うのに・・・嬉しいな。」
「お姉ちゃんの目はどうして緑色なの?」
フィマンはマリーが家に来た時、不思議そうに眺めていたことがあった。
「私のおじいさんがイギリス人だからよ。」
フィマンがぽっちゃりとした顔で笑うと、何か緊張していた様子のマリーもその笑顔につられた。
「おばさん、フィマンってスンスクさんに似ていますね。」
「ミラの願いがあるからね。」
ペク家の人たちには判っているが、ペク家以外の人たちには判らない言葉。
私の顔と似ているミレともう一人スンスクと似た子供がいればスンスクは寂しくないよね
自分が死んだ後に、残ったスンスクが寂しがらないようにと、スンスクと大きな喧嘩をしても命がけで生んだ希望(フィマン)の子供。
再婚もしないで、ミラの夢だった国語の教師をしながら二人の子供を育てている。
そんなスンスクを助けているのは、ペク家の人たちだった。
「マリーはスンギの部屋を知っているでしょ?」
「昔と同じですか?」
「同じよ、結婚したら一緒に住む部屋になるから。」
「おばさん・・・・・」
「いいの、いいの・・おばあちゃんがいないから言っても大丈夫よ。スンギの部屋に行く時、悪いけどこのミルクティーを持って行ってくれる?」
「練乳は・・・」
「買い忘れたから、多めにミルクを入れて砂糖を入れたの。今日の夕方買い物に行く時に買って来る
わ。」
子供の時にはよく二人で隠れん坊をしたスンギの部屋。
あの時はまだスンスクと一緒の部屋で、騒いているスンギとマリーを怒る事もしないで、スンスクはいつもニコニコと笑って本を読んでいた。
久しぶりに入るスンギの部屋。
ノックをしても返事は無かったが、スンギの母親に言われたのだから入ってもいいと思い静かに部屋
の中に入った。
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