スンギはミルクティー 56
ペク家の7人の子供たちは、一人二人と自分たちの家庭を持ち、気が付くと残っているのはスンギと双子のスングとスアだけになった。
結婚をし親になった子供たちの中で、スンスクは忘れ形見と両親の元で過ごしている。
家を出て暮らすことも考えたが、男手一人で幼い二人の子供を育てるのは、とても容易ではないとスンジョに言われ、そのままミラがと過ごした部屋で親子三人で住んでいた。
19歳で結婚して20歳を過ぎたばかりの頃にミレの父親になり、24歳にフィマンが生まれてから半年はミラは生きていた。
辛い恋は自分が十分に知っているから、子供たちには楽しい恋愛をして楽しい恋人期間を過ごして欲しかった。
スンハの結婚はハニが願った通りではないが、特に苦労もしなく初恋の人の妻になった。
妊娠が先の結婚をしたスンハは、気難しい父親のスンジョに結婚を許してもらうために計画的な妊娠をしたのは、それもスンハなりの悩みが会っての事だと言う事を聞いた。
スンリはヘラと結婚をすると決めた時、お互いの両親との経緯で随分と悩んでいた。
それはスンギとは違った悩みではあったが、ハニはスンギの気持ちもよく判っていた。
それはスンミの時にも実感したが、完璧なスンジョに対して劣等感があった。
特にスンギは7人兄弟の中で自分だけが、勉強をしている割には成績が思わしくなく、父や兄妹とずっと学校で比較されて来ていた。
高校生の頃から部屋でタバコを吸ったり酒を飲んだり、髪の毛を金髪に染めてピアスはするし、沢山の女の子と続かない恋愛をしていた。
その姿を見るたびに、ハニはどうしていいのか判らずよく泣いていた。
そんな子供を生み育ててスンジョやグミに申し訳なく思っていた。
「ただいま・・・・ハニしかいないのか?」
「あっ・・スンジョ君お帰りなさい。スンスクは子供とおばあちゃんと一緒に、映画を観に行ったの。それでね、スングとスアはスンギと一緒におじいちゃんの店に行ったの。今日はね、スンギがおじいちゃんの店で正式に雇ってもらうための試作品づくりなんだって。」
スンジョの鞄と上着を受け取ると、ハニは家の中に誰もいない事を良い事に背伸びをしてスンジョの頬にキスをした。
「何か嬉しいことがあったのか?」
「うん・・・スンギがね、髪の毛を切って黒く染めて来たの・・・・料理人になるからって、ピアスも外してね・・・・」
「良かったな。スンギが金髪に染めて来た時はハニはスングの黒の絵の具を持って追いかけていたな。」
「だって・・・・スンジョ君が困るでしょ。教授の息子が金髪でタバコを吸ってお酒を高校生から飲んでいるなんて知られたら。」
「子供の事で職を失うならそれならそれで良かったよ。スンギはオレと似ていて自分の思いを表す術を知らなかったから。ハニがくれた幸せは、子供と言う形でオレの傍にいてくれているから。」
結婚して以来初めて位に静かなこの家で、多分初めてふたりっきりになったのではないだろうか。
今まではウンジョがいたり、ウンジョが結婚して子供が生まれて家族が増え、スチャンが亡くなってスンスクが生まれて、手狭になってきたこの家からハニの父ギドンが別居をして、ウンジョも家族と近くのマンションに移って行った。
「ハニ、スングとスアが結婚したらオレ達二人だけだな。」
「お母さんもいるし、スンスクと二人の孫たちもいるから・・・・・」
「お袋だってもうすぐ80代だし、いつ親父の所に行くか判らない。その時になったら一緒に旅行に行かないか?」
「地球一周なんてしたいね・・・・あっ!冗談だよ。」
「新婚旅行も、あまりいい思い出が無いから、世界一周でもしようか?」
「本当?それまでお互い元気でいないとね。」
ハニが憧れた沢山の子供に囲まれての生活。
一度も静かに過ごした夜は無かったが、スンギが結婚してこの家を出てから少しずつハニと自分の為に、残りの人生を過ごしてもいいとスンジョは思った。
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