スンギはミルクティー 58
スンギがマリーとの結婚を決意してから、気が付けばいつの間にか二年が過ぎていた。
お互いに結婚を決意してから未だに二人は恋人同士のままだから。
24歳になったスンギは世間ではまだ若いが、結婚が早いペク家にしたら晩婚なのかもしれない。
≪ソ・パルボク ククス≫の店も若いスンギが来たことで明るくなり、若い女性客から年配の女性客が増えていた。
ギドンはレジの傍で座り、厨房で動いているスンギが明るい声で従業員と話している姿を見ている事が今の楽しみだった。
「ただいま。」
「お帰りマリー、スンギを呼ぼうか?」
キャリーバックを引き、クローズした店のテーブル席に座って沢山の冊子を並べた。
「電話すれば迎えに行ったのに。」
「スンギが迎えに来てくれたら、店をおじいちゃんに任せないといけないでしょ。ほら、これを貰って来たの。」
ギドンと並んでスンギはマリーの向かい側に座り、テーブルの上に並べられた冊子を手に取った。
「なぁ・・・結婚式をしないといけないか?」
「そりゃあね・・・・世間に私たちが夫婦になったことをお披露目することと、やっぱり一生の記念だから。」
「出来れば・・・・・あまり大きくしたくないよ。ウンジョおじさんの会社の人やおばあちゃんと関わりのある出版社にお父さんとお母さんの病院関係の人・・・・マリーのお父さんの関係の人・・・・考えてみろよ、100人200人じゃ済まなくなる。マスコミも来るわで大袈裟になる。」
「とかなんとか言って、本当は前カノさんたちが来たら困るからでしょう。」
違うとは言えない隠し去りたいスンギの過去。
「じいちゃんが、お茶でも淹れてこようか?」
「悪いな・・・オレはミルクティー・・マリーは?」
「私もスンギと同じ。」
「ククスの店じゃなくて、カフェに変えた方がいいな。」
ギドンのそんな冗談が通るくらいに、厨房にはスンジョの好きな店のコーヒーやスンギの好みの紅茶に、店で出す以外のジュースが並んでいる。
「お前のお父さんとお母さんはいつ帰国するんだ?」
「お兄ちゃんのとこの子供が生まれてからだから・・・・来年・・・・まさかまた一年待つの?一昨年はスンリお義兄さんの所に子供が生まれて・・・去年はスンミお姉さんの所に生まれて・・・なんだかんだの理由があって式を先延ばしして・・本当に結婚する気あるの?」
「あるに決まってるよ。早くマリーと一緒に暮らしたいし・・・店の二階はオレ達様にじいちゃんが改装してくれたから、いつでもお前を迎えられるよ。」
「今夜泊まってもいい?」
「ダメだよ。じいちゃんに聞こえるとまずいだろう。」
そんな話をしている時に、厨房から大きな音がした。
____ ガッシャァーン!!
「じいちゃん?」
スンギが声を掛けてもギドンの声は聞こえない。
不安になって二人で厨房に入ると、ギドンが床に倒れていた。
「じいちゃん!マリーうちの親父を呼んでくれよ。携帯・・・・携帯はレジの所だ。」
「判ったわ。」
元気にしていたギドンも80歳はとうに過ぎていた。
娘が嫁いでからは孫の成長を見る事が、日々の楽しみでもあった。
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