言えない恋じゃないけれど(スア) 3
パラン高校三年1クラスの最前列中央に並んで座るスングとスア。
周囲がテキストを開いて必死になって休憩時間にも勉強をしている中、二人は揃ってタブレットで新作の漫画をチェックしていた。
「うそ・・・・・」
「何が嘘だよ・・・」
「ミナおばさん、引退するんだって・・・・・」
「何で?」
「知らない・・・・・」
「違う、何で知っているんだと言う事。」
タブレットとスマホの両方を見ていたスアは、今にも泣きそうな顔を上げた。
「ギルから聞いたの。」
「随分と親しくしているのか?」
「どういう意味よ!」
思った以上に声が大きかったスアは、自分に視線が集中しているのに気が付いた。
「何よ、変な言い方をしないで・・いやらしい・・・」
「そっちこそ、何を勘違いしてそう言っているんだよ。ギルさんは年上だろう。それなのに呼び捨てか?呼び捨てにするくらいに親しいのかよ。」
「オンマとアッパとミナおばさんに内緒にしてくれる?」
双子で生まれて一度も別行動はしたことが無いのに、スアが自分の知らない所で知らない事をしている事に、スングは急に面白くなくなった。
「次の授業サボるぞ。」
「ダメだよ。自習でもサボったのが、オンマに見つかったら・・・・・それにインハが聞き耳を立ててる。」
「いいよ、サボれよ。オレが適当に誤魔化してやるから。」
スンハの息子インハもスングとスアと同じクラス。
1・2位はスングとスアだが、3位はファン・インハの指定席。
インハは、叔父と叔母に当たる二人の秘密を自分の母であるスンハや祖父母には告げ口をする子供ではなかった。
スアの手を引いてグイグイと引っ張り、授業開始時間に近くなり教室に入って行く生徒とぶつかりながら逆方向に二人は歩いていた。
「どこに行くの?」
「屋上・・あそこなら先生にも見つからない。」
「何を怒ってるのよ。」
「うるさい!」
階段を昇りながら屋上に一番近い階段の前に行くと、スングは立ち入り禁止のチェーンをまたいだ。
「ほら早く!スアのパンツなんて見る気もないからまたげよ。」
スングのバカにしたような言い方に、スアは思いっきりふくらはぎを蹴飛ばした。
「いってぇなぁ~何するんだ!お転婆。」
「この蹴りはオンマ譲りだからね。」
スア達の母のハニは、高校生の時に出て来ない自販機にキックをして商品を出したと言う話を子供たちにしたことがあった。
スアは小さい頃からスングと喧嘩になると蹴飛ばしてはスングを泣かせていた。
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