言えない恋じゃないけれど(スア) 4
時々二人で来る校舎の屋上。
授業をサボってここに来たのは初めてだし、今まで授業をサボったことはなかった。
「ギルさんとどういう付き合いをしているんだよ。」
「どういうって・・私はまだ高校生だから、健全なお付き合いよ。」
「健全?」
「健全。」
「いまどきどころか既に死語になって何十年の言葉だ。」
いくら双子で生まれた時から一緒でも、どこに行くのも一緒なんていつまでも出来る筈はない。
そんな事はスングには判っていたが、それでも家族に言えない事は全部二人で相談し合っていたと思っていた。
「ギルさんとメールで連絡していたのか?」
「うん。」
「好きなのか?」
「好きだよ。」
「アッパよりもか?」
「そこなのよね~一番は変わらずアッパだけど、親と彼氏は別だもの。」
「オレは?」
「好きよ。だってオンマのお腹にいた時も一緒だったし、生まれてからもいっつも一緒にいて、何でも話し合える大切な兄妹だから。」
ずっと一緒にいたスアが自分とは違う人と、知らない間に会っている事を認める気持ちにはスングはなれなかった。
「いつから?いつから付き合っていたんだよ。」
「半年前、スングと二人でミナおばさんの所に行った時、ギルが私の携帯を届けてくれた時から。」
あの日は母に頼まれて、二人は学校帰りにミナの家に立ち寄った。
ミナと三人で古いアルバムを見ていてうっかりと時間が経つのも忘れて、そのアルバムを見ていた。 気が付いた時にはミナの家の時計が、6時少し前を表示していた。
6時半には両親とグミと5人そろって食事をすると聞いていた。
急いで家に帰り、玄関から家に入ると母がどこかの誰かと電話で話をしていた。
「ギル君届けてくれるの?それならスアに外で待っていて貰うわ。」
スアの携帯をミナの家に忘れて来た事を、ギルが連絡してくれていた。
「あら、お帰り。スア、携帯をミナおばさんの家に忘れて来たでしょ?」
ハニにそう聞かれて、制服の上着のポケットに手を入れると、入っているはずの携帯が無かった。
「ギル君がスアの携帯を持ってこちらに向かっているから、外で待っていて。家に上がってもらえばいいけど、明日出張だからすぐに家に帰りたいんですって。」
スングと並んで母の話を聞いていた時、携帯をギルから受け取るところにスングがいて欲しくないと、その時スアは初めて思った。
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