言えない恋じゃないけれど(スア) 5
母からミナおばさんの家に忘れた携帯を、ギルが家まで届けてくれることを聞いたスアは、高校の制服を着替える事もしないで急いで玄関を出た。
「何だアイツ、嬉しそうな顔をして・・・・・・」
スングがそうつぶやいたことは、その時はスアには聞こえていなかった。
玄関ポーチを出て門に続く階段を急いで降りて門扉を開けたが、まだギルが来る様子は無かった。
下り坂の方を背伸びをしたり、道路の中ほどまで出たりと気持ちが落ち着かなかった。
いつも一緒にいるスングには言えないが、少し前から自分よりも10歳も上のギルの事が気になっていた。
ミナの新作が公開される前に見たいと言う理由を付けて、スングを伴って仕事部屋兼自宅によく訪問をしていた。
ミナも親友の子供の双子たちを可愛がり、公開前の新作を気楽に先読みさせていた。
「あっ!」
ギルが運転する車を見つけると、スアの目がパッと輝いた。
家を見上げて、窓からスングがこちらを見ていないことを確認すると、手を大きく上げてギルに見えるように手を振った。
「よぅ!双子ちゃんが一人で待っていたのか?」
「だって、私の携帯だからスングは関係ないもの。」
「待ってて、今車から降りるから。」
車からわざわざと降りたりしなくても、窓から渡すことも出来たが、ギルはエンジンを止めて車から降りて来た。
背の高いスアよりもさらに背が高く、190cmはありそうでいつも見上げなければいけなかった。
「ほら!」
スアの手に携帯とメモを渡すと、すぐにそのメモをスアは開けた。
「電話番号とアドレスを教えて欲しいと言っただろ?」
「いいの?」
「いいよ。」
高校生の子供の自分の言う事など、スアは聞いてくれるとは思ってもいなかった。
「ギルさん・・・・綺麗な彼女に怒られない?」
「彼女とは別れたから今はフリーだ。」
結婚間近だと言っていた大人の彼女と別れたと聞いて、スアは急に緊張して来た。
「じゃあ・・・・私と付き合って・・・・・あぁぁ・・・別にオンリーワンにならなくてもいいし・・・・・・」
「受験生が男に付き合ってなんて、さすがにペク家の子供は余裕だな。」
「だめ?」
「いいよ。今度、遊園地にでも連れて行ってやるよ。」
ギルはスアの気持ちが真剣だとは思いもしないで、軽い気持ちでスアに遊園地デートを口に出した。
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