言えない恋じゃないけれど(スア) 6
スアはギルから貰ったメモを見て、すぐにそれをポケットに入れた。
メモを一度見れば記憶をしてしまうから、メールを打っているふりして登録をすれば、スングにも気が付かれない。
双子だからいつも一緒にいたけど、いつまでも子供ではないし一人になりたい時がある事を判って欲しい。
ギルさんが好きな気持ちを、家族に内緒にするのは気にならないけれど、スングに内緒にするのは悪い気持ちもある。
一緒に生まれたけど、この先もずっと一緒にいる事は無いような気がする。
「あら!ギル君は帰ったの?」
「今から友達と会うんだって。」
嘘を付いちゃった・・・・
遊園地デートを約束した後に、この先のカフェで会う約束をしたことを。
急いで部屋に入って制服を着替えるのに、選ぶ服はリラックスをする服ではなく少しだけおしゃれな外出着。
何と言って家を出ようか。
本屋に行くと言えば、スングも付いて来るし・・・・・・
「オンマ・・・・・」
「出かけるの?」
「えっ!ど・・どうして・・・・」
リビングのソファーに座っている。 澄ました顔で座っているけど、何か疑っているような気がする。
「その服はこの間、アッパに買ってもらったばかりの服でしょ?家にいるのに着る服ではないからそう思ったの。」
「・・・薬局に行こうと思って・・・何か買って来るものはない?」
「別に何もないけど・・・・・」
靴を履いていると、スングも立ち上がって玄関に歩いて来るのが背中越しに判った。
「何?」
「オレも暇だから付いて行くよ。」
「いい・・いいから・・・女の子に必要な物だから・・・スングに付いて来て貰うのは・・・・」
「いつも生理用品を一緒に買いに行くのに、何をいまさら・・・・・・」
「そ・・それは・・・・今日は一人で行きたいの。迷子になるくらいに幼い子供じゃないから放っておいて!」
スアは、顔を赤くして玄関を急いで出て行った。
「何だよアイツ・・・この間までオレの前で、パンツも見えるほどに短いスカートを穿いていたのに。生理用品だって、自分でレジに出すのが恥ずかしいからとオレに行かせたのに・・・・・」
「女の子は気まぐれなのよ。アッパにコーヒーを持って行ってくれる?」
スングは今まで何でも一緒に行動していたスアが、初めて自分を避けて買い物に行くことに何かを隠しているとは思ってもいなかった。
こじんまりしたカフェは、入り口から店内の隅までよく見える。
ギルは、カウンター席でタバコを吸いながら待っていてくれた。
「ギルさん・・・・」
「早かったな・・・あれ?片割れは?」
「スングは、読みかけの本があるから来ないって・・・・・」
ギルさんにも嘘を付いちゃった。
双子だから一緒にいるだけで、今の私はスングとではなくて、ギルさんと一緒にいたいから。
「遊園地・・・・どこがいい?スングの希望も聞いて行かないと、向こうで拗ねても困るからな。」
子供の頃からギルさんとは遊びに行ったけど、いつまで経っても私はギルさんにとって小さなスアでしかないのかなぁ。
「二人っきりで・・・・・遊園地に行きたい・・・・」
「二人っきり?」
ギルの大きな目が、さらに大きく見開いて俯いているスアの顔を見ていた。
「私が好きだと言ったのは・・・・・私を小さなスアではなくて一人の女性のスアとして見て欲しいから・・・・・・」
平静を装っていても、心臓はバクバクして頭はガンガンとする。
「オレと、恋人になりたいと言う事?」
「ダメですか?ギルさんに付き合っている女性がいたから諦めようと思っていたけど、今は特定の人がいないのなら、私と一対一で付き合って欲しい・・・・・・・ダメですか?」
「ダメじゃないけど・・・オレが彼女と別れた理由・・・・・彼女と別の女性(ひと)を好きになったから・・・」
ああ・・・・またギルさんに失恋・・・・
「オレ・・・・遊びでは付き合う年齢じゃないけど・・・・今から付き合う人とは一生付き合ってもいいと思える相手にしたい。」
「振られたのかな?」
「違うよ・・・オレが好きになった女性(ひと)は・・・・スアだから・・・」
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