あなたに逢いたくて 41
ジュングから貰ったわずかな情報だけど、これだけあればハニを見つける事が出来る。
スンジョは、一校づつこの一年の間に転入試験を実施した学校を検索することにした。
看護大の5校はそれぞれ転入試験が実施されていることは電話で確認した。
以前、ハニから聞いていた<おばあちゃんの田舎>は国境に近い離島。
そこから該当する大学は3校が離島からでも通学が可能だった。
通信で単位が取れ、月に数回スクーリングが出来る。
パソコンを使ってその一校づつ学校の概要をチェックした。
自分の授業や、教授に同行して他大学に行く日程等を確認調整し、何とか計画を発てることが出来た。
携帯が生活必需品の今の時代なのに、ハニが電話番号もメアドも変えてしまっているから、今まで近況を聞くために連絡をすることも出来なかった。
ハニと雨が降る駅のホームで別れてからもうすぐ一年四ヶ月。
ようやくハニを見つける手がかりが付いたことで、スンジョはやっとハニに謝る事が出来ると思っていた。
逢いたくて、逢いたくて。
ハニと過ごしたこの部屋はあの頃と変わらないままにしていた。
一緒に過ごした部屋で、姿はなくてもそこにハニがいると自分で思いながら、会話にならない独り言を言った日もあった。
二人の思い出の場所を何度も訪れた。
手放してしまったことに何度も悔やんだ。
ハニを思い出すときはいつも、最後に駅で別れた時に見た涙をながしていたハニの顔。
ハニの泣き顔を笑顔に変えたい。
オレの好きな笑顔に変えたい。
冬が来る前に・・・・・・・
「ハニ、冬が来る前にギドンの所に行った方が良いよ。雪が降るとス幼いンハがいるからソウルまで行くのは大変だ。」
「そうだね、スンハもいる、雪が降る前に船に乗って行かないと寒さに耐えられないね。」
「試験は来月だったか?キム先生が、同じ時期に休暇を取ってくれたみたいだから一緒に行くといい。」
キム・ジョンスは赴任期間終了前の休暇を、ハニの看護師の国家試験に合わせて取っていてくれた。
試験を受けるためにソウルに行くには、幼いスンハを島に置いたままにするのは可哀想で大変だと言って、同行してくれることになっていた。
ハニは、試験勉強も試験の申し込みの手配も、何もかもジョンスが便宜を図ってくれるのに申し訳なく思っていた。
「ギミさん、郵便が届いたよ。」
診療所の手伝いをしているスエさんが、週に一度半島から届く郵便をギミのところまで持ってきてくれた。
「ほれ、ハニ。試験の案内が届いた。」
ギミはハニに、郵便で届いた茶封筒を渡した。
眠っているスンハをハニはそっとベッドに降ろし、その封筒を開封した。
「受験会場の確認をしないと・・・受験会場は・・・・・・・・・・・・パ・・パラン大学・・医学部・・」
もう二度と行くことはないと思っていたパラン大学。
思い出として訪ねるのには、スンジョを諦めきることが出来ず、まだハニには結婚しているかもしれないスンジョに会う事は辛かった。
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