言えない恋じゃないけれど(スア) 10
いつもと違ったスアの様子に驚いたのは、男子ばかりではなかった。
美人なのに、綺麗な長い髪を三つ編みにして化粧もしていなかったスアが一人で歩いている事に驚いていた。
それよりも、他の女子たちのように昨日まで化粧をしていなかったスアが、化粧をしてか実を結んでいなかった。
双子が一人で歩いている・・・・ いつも一緒で、一人で歩いていない事は学校で見たこともなければ初めての事。
「おはよう。スアがお化粧をして髪を解いているの・・・・・いいね。」
すくい上げてサラッと流すと、サラサラと音を立てるように落ちてくる。
地下鉄で会った学生が触れた時は嫌で、つい大きな声を挙げてしまった。
早目に来てしまってきっとスングは不機嫌かもしれない。 判ってほしい。
いつまでも一緒にいるわけにはいかないし、いつかは幾ら仲が良い双子でも離れなければいけないと言う事。
スングがいなくてよかった。
そんな風に思ってしまってゴメンね。
教室の自分の座席に座ると、ギルからのメール。
___昨日は驚いたよね。おじさんからの告白に。
まだ高校生のスアに、子供だったころから好きだったなんて言ったのは、他の人には内緒にしてほしいな。無理にオレの気持ちに応えなくていいから・・・・・
年齢を気にしているギルのメールに、返信をしようと文字を打ちかけたが、そんなことはないと言うだけでいいのに、それさえももどかしくてスアは携帯を持って、人の少ない場所に移った。
ドキドキとしながら、教えてもらったギルの番号に電話をすると、すぐに電話に出てくれた。
<スア?>
「うん・・・・さっきのメール。返信するよりも電話でと思って・・・・」
<気持ち悪いよね・・・おじさんからの告白・・・>
「嬉しい・・・本当にギルさんの事が好き。いつもスングと一緒にいたからギルさんと二人でどこかに行けたらいいなと、いつもそう思ってたの。だからギルさんの言葉凄く嬉しい・・変な子だと思わないでね。」
<思わないよ。>
「ギルさんの恋人になりたい・・だから・・週末の遊園地のデート、楽しみにしているから・・・・」
登校してくる生徒が多くなったからか、辺りが周辺が騒々しくなってきた。
窓の外を見ると、スングが不機嫌そうに歩いているのが見えた。
<もう授業が始まる時間だろ?オレももうすぐお袋のインタビューで雑誌編集者が来るから切るよ。>
ドキドキした。
電話越しに聞こえる低くて優しい声はとても大人で、胸の奥に響いた。
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