言えない恋じゃないけれど(スア) 13
ピョンピョンと跳ねる様にしてギルの前を走るスアは、まるで子供の様に楽しそうな表情をしていた。
「おい、そんなに走るなよ。おじさんに少し休憩させてくれ・・・・・」
ギルは木陰のベンチを見つけてそこに座ると、スアもベンチに近づいて来た。
が、ギルの隣に座ろうとしない。
「どうして座らないんだ?スアがデカくても十分空いてるぞ。」
「し・・・失礼な・・・私のお尻はそんなの大きくないですよ。」
プッと膨れて、ギルの顔の前に無邪気にお尻を付きだしたスアにギルは呆気にとられた。
「年頃の女の子が、おじさんの目の前にお尻を付きだすと、妙な気分になるじゃないか。」
「妙な気分?」
顔を赤くして横を向いているギルに、スアは何のことか気が付いて、恥ずかしそうにお尻を手で隠してギルの横に少し離れて座った。
恥ずかしい・・・・いつもスングとやっていることをギルさんにもしちゃった。
まさか、スングに裸を見られちゃったり、下着姿を見られているなんて知られたら嫌われちゃうかな・・・・・
「どうして初デートを遊園地にしたの?」
「覚えていないかな?昔オレとキエが大学に入ったばかりの頃に、おじさんとおばさんがスンリさんの結婚とかスンスクの所のミラさんに子供が出来たとかで、スングとスアが遊園地に行きたいのを我慢していた時のこと覚えているか?」
「うん・・・あの時私とスングが一番寂しかった頃。兄弟が多い事がすごく嫌だった・・・オンマとアッパは私たちなんていらない子だったんだ・・・・って大泣きしていたっけ。」
あの時初めて、オンマとアッパを困らせた。
『有名なペク家なのに、遊園地も行った事が無ければ海外旅行も行った事が無いの?』 そう言われたのがすごく悔しかった。
長期休暇でどこにも行かない私たちを羨ましがらせていた意地悪な子たちに、すごく頭に来て学校から家に帰ってオンマに泣いて訴えたことがあった。
あの時、ミナおばさんとギルさんとキエさんが家に遊びに来ていた。
「あれが生涯一度の我儘じゃないのか?」
「多分ね・・・・・ギルさんが双子同士一緒に行こうか。と言って来たのがこの遊園地。」
ギルさんとスング、キエさんと私。
まるで兄弟のように一日中遊園地で遊んだ。
「キエさん、どうしているのかな・・・結婚してから会っていない。」
「キエの所・・・・うまく行っていないんだ。別れるかもしれない。」
「うそ!」
「恋愛結婚だと思ったら、キエの奴ずっと誰かを好きだったみたいで、旦那にばれたらしい。」
「不倫?」
「いや・・キエの片想いらしい。お袋も親父も悩んでるよ、子供も出来てるのに。」
複雑だ・・・・・キエさんミナおばさんに似て物静かで落ち着いている人なのに、旦那さん以外に好きな人がいたんだ。
「さぁ、次は何に乗る?」
昔、ギルに遊園地に連れて来て貰った時のあの年齢と同じスアでも、ギルはその分もっと大人になっていた。
スアが次に乗るアトラクションの方に走って行く姿を笑顔で見ているギルの顔は幸せそうだった。
0コメント