言えない恋じゃないけれど(スア) 15
閉園後の遊園地の駐車場の灯りは、辺りを明るくするよりも安全のための街灯だけ。
運よく偶然に街灯の近くに車を停めたからよかったが、今の状況で街灯の灯りが届かない所にいると、静かな遊園地は怖くて泣きたくなりそうだ。
スアの細い指がギルの前髪を上げて、濡らしたハンカチで冷や汗を拭いていた。
「ギルさん・・・大丈夫?」
「少しはね・・・・・でも運転して帰ることが出来そうもない・・・・・」
ペットボトルの水を少し飲んで、まだ吐き気があるのか気持ち悪そうにしていた。
「無理して乗らなければよかったのに・・・私一人でも乗ってもよかった。」
「言えないだろ・・・・大の大人の男が絶叫系に乗れないなんて・・・それにす・・・・・うっ・・・・・」
ビニール袋に口を付けて吐くと、スアは心配そうに背中を擦っていた。
「タクシーを呼ぶから帰っていいよ・・・・・代行を呼ぶから。」
「傍にいる・・・・」
「もう10時過ぎてるだろう・・・おじさんもおばさんも心配しているよ・・・それに学校も・・・・・」
「学校は明日は模擬試験会場になるから休みなの・・」
ギルはポケットから携帯を出して、ペク家の番号を押しかけた。
「オレの携帯から掛けてもいいか?」
「ダ・・・・ダメ・・・・オンマもアッパもギルさんといるのを知らないし、スングに知られたくない。自分で掛けるから・・・・・代行に私から掛けようか?」
「いいよ。代行はオレが掛けるから、スアは自分の携帯で家に電話しろよ。遅くなったけど、すぐに帰ると。」
具合の悪いギルさんを置いて、家に帰る事なんて出来ない。
でも、電話をしないとオンマの事だから大騒ぎにするよね・・・・
「オンマ・・ゴメンね、遅くなって・・・・今と・・友達の家にいるの。それでね、その子遊園地で気分が悪くなってしまって、家にの両親がいなくて一人で置いておけないから・・・・・・うん・・大丈夫。遅くなるから泊めてもらうね。オンマもスングも知らない人・・・塾の友達だから・・・・」
嘘を吐いちゃった。
ごめんね、オンマ・・・ アッパに怒られるかもしれないと言う事より、ギルさんとデートをした事をスングに知られたくない。
私の塾の友達とはスングは話しをした事が無いから知らないの。
嘘はいつかばれてしまうかもしれないけど・・・まだギルさんの事を誰にも知られたくない。
スアの声がギルに聞こえたのか、通話を終えて近くに行くと、少し身体を起こして子供にするようにスアの頭の上に手を乗せた。
「こら、親に嘘を吐いたらダメだろう・・・・」
「だって・・置いておけないから・・・」
「オレの部屋に着いたらすぐにタクシーを呼ぶから。もう直ぐ来てくれるみたいだ。」
初めてのデートの終わりは、とんでもない思い出になったけど、スアは少しでもギルの傍にいたかった。
「スンジョ君、スアがね友達と遊園地に行ったんだけど、何だかね・・・友達が具合が悪くなったみたいなの。」
「迎えに来て欲しいのか?」
「タクシーで友達の家に行って、泊まって来るって。ご両親が旅行でいないし、通いのお手伝いさんもお休みを貰っているから一人なんだって。」
両親の話をリビングで本を読みながらスングは聞いていた。
友達だって?誰だよ・・・最近のスアは何か隠していて可笑しい。
明日かあったら聞き出してみた方がいいかもしれないな。
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