あなたに逢いたくて 44

ハニとスンハがウファ大学に着くと、いつもは静かな学生課の前に沢山の人が集まっていた。

その中の一人にハニが声を掛けた。

「何かあったの?」

「うん!ソウルの大学教授が来ているんだけど、同行してきた人が見たことも無いくらいに凄くカッコいいの。」

そうなんだ・・・・だからみんな集まっているんだ。

「ハニも、見て行かない?女子が殆どのうちの大学だから滅多にこんな機会はないわよ。」

「私はいいわ。スンハを託児室に預けて、今日は帰りに船が出そうにないから宿泊願いを出してくるから。」

「まだ、忘れられないんだ・・・・・・・・スンハのパパの事・・・・・」

そんな友人の言葉に、ハニは笑うしかなかった。

「じゃあ、あとでね。教室で待ってるからね、ハニ!」

少し開いている学生科のドアから聞こえた名前に、スンジョはハッとして振り向いた。

<ハニ?>

ドアから見える学生科の様子を伺う人の顔の中に、ハニの顔を見つけることは出来なかった。

一人だけみんなと違う方向に歩いて行く小さな子供を抱く髪の長い後姿がチラッと見えた時、一瞬それがハニのように見えた。

「どうかされましたか?」

「いえ・・・・・・あの、この大学は託児所があるのですか?」

「職員用にあるのですよ。一人の学生にだけ特別に、職員用の託児室を利用する許可を出しているんですよ。気の毒な学生で、結婚してすぐに旦那さんが事故で亡くなってしまったらしいんですよ。その時お腹に赤ちゃんがいたのですけど、子供の存在も知らないうちに事故に遭って・・・・ものすごく頑張り屋の学生なんですよ。身内は年老いたおばあさんと離れて暮らす実の父親だけで。小さな診療所の娘さんで、手伝いながら通学しているんですよ。」

「そうですか・・・・・・・」

同じ名前でも、人違いか・・・・・・

後姿が似ていたけど・・・・結婚してすぐに旦那さんが亡くなった・・・・・・頑張り屋はハニと同じだけど、ここにもいないのならもう一つの大学か・・・・・・

「すみません。今日、娘を連れて来たのですが預かってもらえますか?」

「オ・ハニさん良いですよ。今日は帰りの船が出そうにないですからねぇ。スンハちゃん、オンマがお勉強の時は先生と一緒に待っていましょうね。」

託児室の保育士は、ハニが差し出した宿泊願いを確認し、託児室利用許可書を受け取ると、ハニに抱かれているスンハを受け取った。

ハニはスンハを託児室に預けると、また急いで学生課に向かった。

まだ、学生課の入り口には沢山の学生が中を伺うように見ている人たちが沢山いたが、ハニはそこを通り過ぎて、宿泊届を小さな小窓から職員に渡した。

チラッと他の生徒たちが見ている視線の先を見たが、物陰から見えるのは後姿が衝立の所為で半分隠れていた。

スンジョ君みたいにカッコイイ人なんか、他にもいるのだろうか・・・・・・

来るはずないよね、こんなへんぴな所にある小さな大学に。

私は、皆みたいに勉強や生活にゆとりがあるわけじゃないから、何が何でも受かる様に再来週の試験の勉強をしないとね。

ハニは、履修している科目の講義を待つ間、特別教室で試験のためのプレテストを受けていた。

今日は、ソウルから来た大学教授の講演に同行して来た人がカッコイイ人だということで、ほとんどの生徒は講演を聞きに行き、教室内でプレテストを受けている生徒はごくわずかな人数の生徒しかいない。

問題を解きながら時々、窓の外を見ると二年前のあの日を思い出すような雨が降っている。

思いを消すようにハニは頭をポンポンと叩き、顔を机に戻しテスト問題に取り組んだ。

ハニが看護師の試験を必死にやるのは、少しでもスンジョとのつながりを持っていたかったから。

もし医学部に戻って医師としてスンジョが働いていれば、遠く離れていても同じ職場で一緒に仕事をしているような気がするからと思ったから。

『スンジョ君が医師として仕事をしていれば、いつか同じ病院で勤めることがあったら、お手伝いが出来るように看護師になったの』

いつか笑ってそう話せる日が来ることを願っていた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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