言えない恋じゃないけれど(スア) 23
今まで女と付き合わなかったわけじゃないし、割り切った付き合いをしてそれなりの経験もして来た。
出版社に入社して、どの分野に行くのか希望しても通るわけはないことくらいわかっていた。
「ほら、ギル撮影に行くぞ。」
「はい・・・・・」
「緊張してるのか?」
「まぁ・・・・・グラビアの現場は初めてだし・・・・・」
「はは・・・雑誌となってみたのとは違って撮影現場は雑然としていて、色気を感じてそそるもんは無いからな。カメラマンの言うとおりの指示で動けばいいから。」
とはいえ、雑誌で見る女の子が目の前で色っぽいポーズを取ると、緊張するに決まってるじゃないか。
上司には言えないが、お袋やキエに隠れて見ているアダルト雑誌で人気のパク・ミニョンは好きなグラドルだからな・・・・・
撮影をする部屋は意外と狭くて、パク・ミニョンが撮影に使う小道具で更に狭く感じた。
「よろしくお願いしまぁ~す。」
初めて聞くミニョンの声に、子供みたいにときめいた。
「こんにちわぁ。」
明るい少し鼻にかかった声で覗き込むように挨拶をして来た。 雑誌で見るよりは幼い感じのミニョンは、顔とあの体系のギャップで人気のグラドルだった。
「新しい人?私と同じくらいの歳みたい・・・・・・」
「ミニョンと同じだよ。今年うちの会社に来たギルだ。初めてだから緊張しているから、ミニョンが緊張を解いてやってくれるか?」
「はぁ~い。」
目の前のミニョンは、胸元が大きく開いた服を着ていて目のやり場に困っていると、クスクスと笑っていた。
「グラビアとかは見ないの?」
「見ますよ。」
「誰が好き?私はまだ駆け出しだから、どれくらいの人が買ってくれるのか気になっちゃう。」
「・・・・てます・・・持ってますよ、ミニョンさんの本・・・・・」
「本当?」
人見知りの自分とは対照的に、ミニョンは初めて会ったオレともすぐに打ち解けることが出来た。
撮影の時の繋がりが当たり前で、彼女から連絡を貰うなんて思ってもいなかった。
「ギル、お前に電話だぞ。」
誰だろう。 ここにはお袋もキエも電話をしてこないし、親父も仕事先に電話を入れる人間ではない。
「もしもし?」
<私、ミニョンよ。仕事が終わったら一緒に食事に行かない?>
断る理由もないし、下心もちょっとあったからひとつ返事をした。
「いいですよ。」
ミニョンは外では食事を出来ないからと、指定した場所が高級ホテルではなくて、自宅マンションだった。
人気グラドルなのに、一雑誌記者のオレを招いていいのかとも思ったが、外で話したり食事をしていたらパパラッチに見つかってしまうから仕方がない。
待ち合わせ場所に行くと、赤い高級車が人々の視線を浴びていた。
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