言えない恋じゃないけれど(スア) 24
売れっ子タレントだから、住んでいる所も高級マンションだろうと思っていたら意外だな。
「どうぞぉ~」
ワンルームの小さな部屋に女の子らしいベッドカバーにカーテン。
それなのにドレッサーも無く、クローゼットも無くて、洋服類は壁に少しだけ掛けられていた。
意外過ぎるほど質素なミニョンの部屋に、見廻しているとミニョンはどこからか新しいスリッパを出して来た。
「履いて・・・・新品のスリッパだから気にしないで。」
「新品じゃなくていいよ。古いのでもオレは構わないから。」
「いいのいいの・・・誰もこの部屋には来ないから。」
「マネージャーは?」
普通に聞いてみた。
「マネージャーなんていないもの。全部自分でやってるの。だからどんな仕事でも受けて、後で後悔しているのよ。」
ぎっしりと書き込まれたシステム手帳に、休みらしい休みが見られないスケジュール。
ミニョンは確か高校を出てからずっとこの世界で仕事をしてたはず。
一人でここまで登って来たと思うと、助けたい気持ちになって来た。
「マネージャーをどうして持たないんだ?」
「判んないから・・・・どんな人がいいのか判らないの。」
小さなテーブルの上に置かれたカップに冷えた水を注ぎ入れると、それをミニョンはギルに勧めた。 「ゴメンね、私仕送りをしないといけないから水しかないの。」
「仕送り?」
「うん、田舎に両親と兄弟がいるんだけど、仕事が無くて私がソウルまで仕事を見つけに来てスカウトされたの。一応、兄が田舎で仕事をしているけど、まだ私の下に弟が二人に妹が一人いるから大変なの。」
ミニョンの事をデビューした時から知っていたけど、知っている情報は田舎の両親に仕送りをするためだったと言う事だった。
「この部屋の家賃・・・・・いくらだ?」
「どうして?」
「ソウルでの家賃も大変だろう。オレのマンションに来ないか?」
ミニョンのファンでもあったが、家具一つも買わないで田舎の実家に仕送りをしている彼女が可哀想で、部屋代分でも楽にさせてあげたい気持ちだった。
オレはお袋が買ってくれたマンションに住んでいて、一人で住むには広すぎる部屋で、家に帰って誰かがいてくれればいいといつも思っていた。
ミニョンとの同棲は、そのすぐ後から始まった。
その頃はまだお互いにただの友人としての付き合いの延長だった。
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