言えない恋じゃないけれど(スア) 26
「何年一緒暮らしたの?」
「結構一緒にいたんだよ。別れたと言うか、ミニョンが出て行ったのは去年だから・・・・・・」
大人のギルの目に涙が浮かんでいる。 聞いていいのだろうか?別れた理由を・・・・・
「別れた理由さ・・・・・オレはただのミニョンのファンだったってこと。」
実家に送る資金を考えて闇雲に仕事をしていたミニョンは、家賃を払う分が浮いた事で、一緒に暮らし始めてからしたい仕事だけをするようになって来た。
お互い出来るだけ一緒に夕食だけでもしよう。
それが、同棲を始めた時の条件だった。
出版社での仕事にも慣れ、これが合っていたのか一人で撮影現場に行ったり、タレントへの仕事も依頼等も任されるようになると同時に、ミニョンもオレと同じ部屋で眠るようになったことが切っ掛けなのか、雑誌の仕事以外にもテレビドラマや映画にも出る様になって来た。
「知ってる・・・スタイルが良くて、人柄もいいからうちの家族も好きだったよ。あのアッパでさえ、テレビでミニョンさんが出ている時見ていて、オンマがよく怒っていたから。」
「ハハ・・・・お互いに仕事が面白くなるとね・・・すれ違うんだよ。喧嘩もしたわけじゃないけど、オレの一言がいけなかった。」
久しぶりに二人一緒の休みになった時、ミニョンが見つけたアルバムの中に挟まっていたある写真。
「これ・・この子って誰?」
「お袋の親友の娘と息子。双子なんだ。」
「へぇ~ギルとキエさんと同じね。」
「可愛いだろう?毎年家族ぐるみで会っていたけど、ここ何年かはオレだけ会ってないから、キエが持って来たんだ。その双子が生まれた時、お袋とその親友は互いの子供が結婚したらいいのにと言っていたんだ。」
「そう・・・・・」
ミニョンの声の変化に気が付けばよかったのに、気が付かないオレは無神経だった。
「10歳も年下の子と結婚なんてさ、ジェネレーションギャップを感じるよ。」
「本当の気持ちは?」
「気持ち?オレが好きでも、スアの方はどうかな?まだ高校生になってもいないし・・・・・」
____バシッ!
「どうしたんだよ。」
手を上げた事のないミニョンが、目に涙をいっぱい溜めてオレを睨んでいた。
「好きなの?その子の事好きなの?」
「何を言ってるんだよ。オレはミニョンと結婚をしようと思っていると言っただろう。自分の気持ちよりもスアの気持ち・・・・・・・」
その時に無意識に言った言葉にオレは気が付いた。 ずっとスアが子供のころから好きだったと。
スアとは年が違うからと子供の時から自分に言い聞かせて来たし、スアはオレをスンリさんやスンスクさんとスンギと同じ様に兄として見ていたから、口に出そうとしていなかっただけ。
「もういいよ・・・・いいから・・・・ミニョンさんの事は好きだったんだよね。」
「憧れていたからね。雑誌で見たミニョンに憧れていた・・・・・出版社に入ったのも人気のあるミニョンともしかしたら会えるかもしれないと言うガキっぽい憧れだった。でもさ・・・・結婚はするつもりだった。」
気まずくなったのはその頃だった。
ミニョンはオレとの関係を戻そうと仕事をあまり入れなくなり、専業主婦になることを決めていた。
「ギル、今日はね少し外れたところのスーパーに買い物に行ったの。『グラビアのミニョンですか』って聞かれたから『よく似ていると言われるんですよ』って言ったの。そしたらね、おまけしてくれてほら・・・・・・」
仕事を入れなくなったらミニョンは化粧もしないし長い髪も三つ編みにして美容院さえいかなくなっていた。
「化粧くらいしろよ。」
「いいの・・・仕事を入れていないから・・オフの時くらい・・・」
自分がミニョンをダメにしていくような気がしていた。
オレに嫌われないようにと、必死になって妻を演じているとしか思えなくて。
「恩着せがましいよ・・・・オレは仕事を辞めろと言った覚えはないし、無理してオレの妻を演じる必要はないだろう。」
そんなオレの酷い言い方にもミニョンは言い返さなかった。
「どうして言い返さなかったの?」
「そうだな・・・・・当時もキエは知っていたけど、お袋は知らない・・・・・オレとミニョンの間に子供が出来たから。」
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