言えない恋じゃないけれど(スア) 28
自分の中で気が引ける事があったのか、ミニョンと過ごした日々を思い出しながら話していたら、時間が経つのを忘れていたのか気が付けもう11時になっていた。
「もうすぐ昼か・・・・ミニョンとのことを話せば長くなるが・・・あと少しだけにしておくよ。」
病院で動く事のなくなったミニョクの小さな身体を、ミニョンはしっかりと抱きしめて離さなかった。
マネージャーは子供のよくある熱だと思って、撮影中のミニョンに取り次がなかっただけで、オレからの電話でミニョクが息をしなくなったと聞いて、亡骸を抱いたミニョンは半狂乱になっていた。
「ギル、事情はどうでもいいけど、どうして子供が生まれた事を母親である私に言わなかったの?在宅の仕事だから、子供を見ていてあげることだってできたのに。」
「母さん・・・・ミニョンの為だったんだ。母さんには仕事に専念して欲しいし、未婚で子供までいると判ればミニョンの仕事にも関わって来るから。」
「バカね・・・母さんはあなた達の事を守ってあげることくらいできるわ。ミニョンは傷ついていると思うの、優しくしてあげなさい。たとえ結婚はしていなくても、私の孫の母親であなたの子供を生んでくれた大切な人よ。母親が子供を亡くす気持は母親にしか判らない。結婚して何年もかかってキエとあなたが生まれた時の喜びは、誰にもわからない。」
やり直そうとお互いに努力した。
ミニョンはミニョクの事を公表すると言ったが、今はその時じゃないとオレが止めた。
子供を亡くしたミニョンが、マスコミやファンの人からのバッシングに耐える事が出来ないから。
亡くした子供を忘れる事は出来ないが、いつまでも悲しんでいる分けにも行かず、今度はミニョクに母親らしいことが出来なかったからと、ドラマでの仕事を母親役の作品を選ぶようになっていた。
「で・・・あの派手な下着は?」
「ミニョンが仕事で使った物で、そのまま置いて出て行ったんだ。」
「最近までは続いていたんでしょ?おばさんの家にいる時に結婚するっておばさんから聞いていたし。」
「別れた原因は、オレなのは確かだ。スアの事が好きなのかと聞かれてもそうだとも違うとも言わなかったし、事実スアの事は好きだけど、まだ子供だからな・・・・・オレとミニョンの年齢になると、先の事を考えたくなるんだよ。」
「先の事?」
「結婚だよ。ミニョンはオレとの結婚を望まないと言って・・・・オレの子供を亡くしたから、もし結婚してももう生む勇気が無いと・・・簡単に言えば振られたんだ。ミニョクの事はオレにも責任があったしな・・・・オレがミニョクをお袋に預けていれば、死なせずに済んだと・・・・・・スア?」
「ギルさんもミニョンさんも優しすぎ・・・・・・・・・そんな風に自分を責めていたら亡くなったミニョクが可哀想・・・・・」
「お前も優しいな。同棲していた女がいる事だけじゃなくて、子供までいたオレなんて嫌だろ?」
スアは首を横に振って、ただギルに抱き付いて泣くだけだった。
「今でもミニョンさんの事を好き?」
「嫌いではないよ・・・嫌いで別れた訳じゃないから。ミニョンが許してくれるのなら、ちゃんと結婚をしたかった。勿論スアの事も好きだけど、スアはまだこれから大学に進学して、いい男との出会いを待っていた方がいいよ。」
朝食に作ったおかずを温め直して、二人は無言でそれを食べ始めた。
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