言えない恋じゃないけれど(スア) 30
ギルさんのマンションから笑顔で出て来たけど・・・・無理・・・・・
角を曲がってバス停に着いたころには、涙が溢れて止まらない。
知らないおばあさんが、私があまりにもひどい顔をして泣いているから『大丈夫?』と聞いて来たけど、大丈夫だとは言えない。
「すみません・・・・・・悲しい映画を観て・・・・・・・」
「綺麗な顔をしているのだから、映画館で気持ちが落ち着いてから出てこれば良かったのに。」
「そうですね・・・・・ありがとうございます。」
笑顔を作ってバスを降りると、出来るだけ泣かないように家に続く長い坂を歩いた。
ミナの仕事場に行った時に会うギルは、いつも仕事モードでミナの書き上げた原稿をチェックしてそれを印刷待ちしている工場に持って行く姿しか見たことが無かった。
「やぁ、双子たち。今度のお袋の作品は、ちょっと意外な展開だよ。」
スアとスングをいつまでも幼稚園児の様な接し方で、頭をクシャクシャとしてくれるギルは、ニッコリと笑って陽に焼けた肌に白い歯が漫画に出てくるカッコいい男の人に見えた。
ギルがスア達に普通に接していた時に、ミニョンと一緒に暮し知らない間に子供が生まれて、その子供が不運にも亡くなって・・・・・・ミニョンとやり直そうと努力をしていたけど、やり直すことが出来なかった。
外泊をして気が引けることが普通なのに、オンマの顔が見たくて仕方がない。
それなのに何よ、遠くからも判るくらいに目を吊り上げて私が来る方角を睨んでる。
「遅い、遅い!!」
「いいじゃないの遅くたって、別に悪い事をして来たわけじゃないから。家に入らせてよ。」
「オレに何か隠しているだろう。」
「双子だからって何もかも言わないといけないの?もう私達高校二年生よ。あと数か月先には高校三年。」
そうまだ私は高校生。
ギルのそばにいて、傷付いている心を癒したいけど、私には何も出来ない。
「泣いているのか?」
「泣いちゃ悪い?スングが私を見張ってばかりいるからウンザリなの。」
スングは何も悪くないけど、今は双子でいつも一緒にいても、スングにだけは何も話したくない。 「お帰り・・・・・どうしたの?」
「オンマァ・・・・・・・・・」
スアはハニの姿を見るなり抱
き付いて大きな声で泣いた。
ハニはそのスアの様子に驚いたものの、何か事情があるのだろうと何も言わずスアが泣き止むまで背中をトントンと叩いていた。
「おい、スア!おばあちゃんもお父さんも心配・・・・・・・・」
スンジョは泣いているスアに怒鳴っているスングに、部屋に行くようにと合図を送り、スンジョはスンジョで書斎に入って行った。
ハニはスンジョがスアと二人だけにしてくれたことで、話を聞いてあげる様にしてくれたのだと思った。
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