言えない恋じゃないけれど(スア) 31
泣き止まないスアを、ハニは自分の寝室に連れて行った。
「ここならスングも来ないから・・・・・スアの部屋だとスングが聞き耳を立てているからね。」
ハニは泣いているスアを椅子に腰かけさせ、自分はその横に椅子を移して泣いているスアの顔を柔らかなハンカチで拭いた。
「何かあったの?最近スングと一緒にいないから、喧嘩でもしたのかと思ってたの。」
喧嘩はしていないと言うように首を横に振ると、ハニは何も言わないでいるスアをそっと抱いた。
「大人になったんだよね、スアは・・・・・・双子だからっていつまでも一緒にいる事もないけどね・・・昨日の夜のスングは面白かったわ。おい、スアはどこに行ったんだ・・・・・誰と遊びに行ったんだ・・・・・外泊?いくら塾の友達だからって、そこまでするか?オレが具合が悪くなっても心配しない癖に・・・・・って・・・」
「スングが?」
同じ娘でもスンハもスンミもこんな風に甘えて泣いたことは無かった。
それはスンハがスアの頃には、インスンと付き合っていたし、スンミはバレエに夢中になっていた時期だったから。
それよりも兄妹が多くてみんな自分の悩みは自分で解決をする術を知っていたが、スアとスングは思いがけず遅い年齢で授かりスンハの子供と一緒に育てていたから、一緒にいる機会も多かった。
そのせいか、スンハに似ているところもあるスアをいつまでも小さな子供のように見ていた。
「スア・・・・好きな人が出来たの?」
「えっ?」
「だからスングを遠ざけたいのよね・・・・学校に行けばインハもいるし・・・オンマには判らないクラスだからね・・・1クラスは・・・クスッ・・・・」
5人の兄や姉を見て来たからなのか、スアが何を悩んでいるのか、空気の読めないハニでもさすがに判る。
「どんな人かなんて聞かない・・・聞かないけど、後悔するようなお付き合いはしてはダメよ。」
「後悔するような?」
「そう、スンミがヒョンジャと結婚する前にある人とお付き合いしていたの。好きになってはいけない人で、傷付いたのはスンミだけじゃなくてその人も・・・その人と関わりのある人も傷ついた・・・・勿論ヒョンジャはその事を知っているわ。ヒョンジャがいたからスンミが早く立ち直れたのだから・・・・・・」
歳の離れた姉が昔何かあったことは子供心にも気が付いていた。
今のスンミはスアの小さい頃に見ていたひ弱で大人しい姉ではなく、アフリカや未開発の土地でヒョンジャと生活をしている活動的な姉。
ヒョンジャは国境なき医師団として働き、スンミはその土地の人に畑を耕し作物を育てる事を教えていた。
細くて子供が生めないとみんなに言われていたスンミもいつの間にか3人の子の母になっていた。
「辛い恋はしたらダメよ。それに来年は受験学年。スアやスングならきっとどこの大学だっていけるし、本当は寂しいけど海外の大学でもアッパは許してくれると思うよ。お兄さんやお姉さんの様にパランじゃなくてもいいから、勉強に差障る恋愛もしないでね。」
スアもいつかは母に自分が好きな人が誰なのかを言わないといけないことは判っている。
いくらギルが自分の事を好きだと言ってくれても、まだギルの中にミニョンがいるから、母にも好きな人がいると言えない。
時々ギルの母のミナおばさんが来ているから、いつかどちらかの親に判ってしまうかもしれない事もスアは判っていた。
「ねぇ・・・オンマ・・・・今日オンマと寝たい・・・・・」
「何を言ってるの?」 スアが珍しく甘えて来たことにハニは驚いた顔をした。
「アッパとばかり寝ないで、たまには私と一緒に寝てくれてもいいのに・・・・小さい頃は時々寝てくれたから・・・・」
「あ・・・あれは・・・ね・・・・・アッパが当直で・・・・ううん・・・スングとスアが遊んでいてなかなか寝ないから一緒に寝ただけでしょ。兄弟の中でスアとスングだけよ、オンマと一緒に寝たのは。いいわ・・・アッパはどうせ書斎で本を読んでいるから・・・・・お風呂も一緒に入っちゃおうか?」
「うんうん・・・・・オンマよりも胸が大きいから、嫉妬しないでね。」
「まっ・・・・・誰が嫉妬なんて・・・・・・」
一番下の小さなスアが、誰かに恋をしていることを知ったらスンジョ君はどう思うんだろう・・・・ スンジョ君なら気が付いているかもしれない。
だから、スングを部屋に行かせて二人だけにしてくれたんだね・・・・・
0コメント