言えない恋じゃないけれど(スア) 35
「あら?あれは・・・・・・・」
「お客さんどうされましたか?」
「何でもないわ、もう少し先のマンションの前でいいわ。」
キエは、近くの店に手を繋いで入って行くギルとスアの姿をしっかりと見ていた。
『ギルが新しい恋を見つけたのね。今度の恋は、ちゃんと人にも言える恋になるといいね。』
キエは姉として弟ギルの恋愛を心配していた。
お互いを思いやり過ぎて空回りし傷ついて、大切な小さな命まで無くしてしまった。
やり直そうと努力していたのは知っているが、何が原因でミニョンがギルの元から去って行ったのかは、双子の姉のキエも知らなかった。
「これだよね?スアの好きなレモンの紅茶って・・・・・レモンティーでもいいんじゃないか?」
「ダメなの・・・・スンギ兄さんはミルクティーが好きだけど練乳入りしか飲まないから、妹の私はレモンたっぷりの紅茶。これはレモンジュースの中に紅茶が入っていて美味しいの。」
籠の中にスアの好きなレモンの紅茶を入れ、スアの好きなクッキーやお菓子を入れた。
「おばさんの食べる物はいいの?」
「お袋は作品を書いている時は間食はしない・・・・・・スングは何を食べるか知っているだろう。」
「スングはチョコレートが好きだけど、オンマが作った大人のチョコレートがいいみたい。甘いお菓子は好きじゃないって。」
「それならスングにはチョコレートを買って行こう。」
オンマが作った大人のチョコレートは、湯煎して作ったチョコレートではなくて鍋に直接火を当てて溶かす時に焦げたチョコレート。
レジで精算すると、ギルは何も言わないでショッピング袋に入れた。
「どこか寄ってく?」
「でも・・・・・」
一応遠慮をしようと思っていたが、少しでもギルと一緒にいたい。
それが少しでも一緒にいると、好きな人の何かを知る事が出来るような気がしていた。
店を出ると、繋がれた手は知らないうちに指を絡ませて恋人繋ぎになっていた。
恥ずかしくなったスアはその手を離そうと腕を引いた。
「オレと手を繋ぐのは嫌になった?」
「だって・・・・・恋人繋ぎ・・・・・・」
繋がれた手を見たギルは、指を離して普通の手繋ぎに変えた。
「ゴメンゴメン・・・・スアの手を離さないようにしていただけで・・・・深い意味はない。」
ギルが言うことは判っていた。
ギルにとってスアはまだ小さなスアのままだったから。
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