言えない恋じゃないけれど(スア) 37
買って来た飲み物をカップに注ぎ、つまみやお菓子を皿に盛って・・・・・・
二人並んでいる姿を見れば、勘の良い人なら二人がお互いに気持ちがあると言う事は判る。
キエは母の手伝いでミナの仕事部屋に入っているが、スングはスアとギルの様子を伺っていた。
「ギルさん、オレがしますよ。おばさんの取材もあるんでしょ?」
「いいよ、いいよ。お袋の取材は昨日の夜に電話で済ませたから。親子で良かったよ、予定より先に仕事がまとめる事が出来て。」
何だかおかしい・・・あの二人・・・・・
まさかな、ギルさんはオレ達よりも10歳も歳が上だし、キエさんが結婚をしている年齢だけど、高校生のスアとそう言う付き合いをしているはずはない
第一オレとスアはいつも一緒で・・・・・
「スング、飲み物とお菓子ここに置くね。」
「うん・・・・・・お前さ・・・ギルさんと近くない?」
「ち・・近い?」
「くっつきたいのか?」
「まさか・・・・じゃ、おばさんの所にも持って行くから・・・・・」
顔色を見ても何か隠し事をしているようにも見えない。
スアはお母さんに似ていて、何か困る時には顔にすぐに出るし、焦ってそこら辺りの物をひっくり返すから、オレの思い過ごしかな?
そんな事をいつまでも考えるよりも、ミナの新作を見る事にした。
スアがミナの仕事部屋に入るのと入れ替わりに、キエがミナに挨拶をして出て来た。
「もう帰るのか?」
「うん、旦那が今日熱があって会社を休んでいるからね。一応妻だし子供の父親だから看病をしないと・・・・」
なんとなく顔色が悪く辛そうにしているキエを見て、ギルは送って行こうかと聞いていた。
「タクシーで帰るから。」
「オレがキエさんの家まで付いて行きます。」
「でも、スアちゃんは?」
「ガキじゃないから一人で帰れますよ。」
スングは自分の鞄を持つと、急いで玄関口に行き靴を履いた。
この日が、スアとスング、ギルとキエの二組の双子の関係が変わり始める切っ掛けの日になった。
マンションの狭いエレベーターの中は、隣にいるキエの甘い香りがスングの鼻孔を擽る。
「小さかったスングが大きくなったわね・・・・・身長は何センチあるの?」
「182センチ・・・・・」
「背も高いし顔もいいし頭もいいからモテるでしょう?」
「興味ないですから、そう言うのに・・・・・」
「母から聞いたあなたのお父さんと似ているわね。」
「そうですか?」
キエに見られていることが判っていたが、小さなころから好きだったキエが隣にいると緊張をして来る。
自分を見ているキエの顔を見たくてチラッと横を見ると、薄っすらと涙を浮かべていた。
「キエさん?」
「スングにキスしたい・・・・・・・」
そう言ったのと同時に、スングが答えるよりも先にキエの口がスングの口を塞いだ。
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