言えない恋じゃないけれど(スア) 42
「ごめんなさい・・二人の間に入ってはいけない事は判ってたけど、ミニョンさんのお腹にいる子供はギルさんの子供?」
「スア・・・・・・・」
「違うわよ。私だけの子供。」
「ミニョン・・・・・」
「だましたり誤魔化したりしないで。私だって分かるわ、どうしたら子供が出来るのかっていう事くらい。相手がいないと出来ない事でしょ?ギルさんと・・・・そういう事をしたから・・・・・・・・」
何でも平気で言える自分でも、言えない事もある。
ましてやギルとミニョンは籍こそ入っていなかったが、夫婦同然の暮らしをしていたのだから。
「スアちゃん・・・・ギルはお腹の子の遺伝子を貰っただけ。父親ではないわ。」
「ミニョン・・・・・」
「ギルは、生むなと言った。それは自分の子供じゃないと言っている訳でもない事は判ってる。私の仕事のために堕ろせと言ったのだと判っているけど、それを言った事でこの子の父親としての役割を捨てたと同じ。」
「否定じゃない・・・公に出来ない子供なら生んでほしくなかったし、ミニョンがこの子供を生んだら実力もあるのにそこでタレントとしての仕事が・・・・・・・・・」
「私ね、仕事を辞めてもよかった。ギルと一緒にミニョクにしてあげられなかったことをしてあげたかった。貧しい家庭に生まれ育ち、仕送りをするために働いたのだけど、それをギルが助けてくれた。ギルは私が仕事をする時の負担を随分と軽くしてくれた。そんなに素敵な人の子供をもう一度生みたかった。ギルはもう子供はいらないと言っていたけど、私の計画的な妊娠を話したらどう思った?」
「計画的だったのか?」
考えれば計画的だった様な気もした。
ミニョクの時はツワリがひどく、母の友人でスアの父親のスンジョに頼んで、点滴をして貰った。
二人目の子供が出来た時、暫く仕事が無いと言っていたのは、理由を付けて仕事を入れていなかったのではないかと気が付いた。
「よりを戻せない事は判っているの。私達は、ミニョクがいなくなった時に終わったから、この子はね私だけで生んで育てるから心配しないで。ただ、子供にだけ父親を教えるから時々会ってくれるだけでいい。ギルが私のファンでいてくれた時のままでいいから・・・・私を一緒に暮らしていた女性(ひと)と思わないで、ファンでいてくれるだけで・・・・ギルが私を見ていてくれるだけで、私は何も望まない。だからミニョクの事を公表したの。」
スアはミニョンがギルの事をまだ好きだと判った。
ギルもまだミニョンへの想いが残っているから、自分への接し方を子ども扱いしていたのだと知った。
「スアちゃん、ギルをお願いね。一人はいなくなったけど、子供がいるギルは嫌い?」
「嫌いじゃないわ。ギルさんは大人だもの、好きな女性(ひと)がいても私の片想いかもしれないけどギルさんが好き。」
ミニョンはスアの両手を取ってニッコリと笑った。
「ギルをお願いね。ギルは何でも言えるように思うかもしれないけど、相手の事を思い過ぎて言えないの。ギルの子供であなたに迷惑はかけないわ。元気な子供を生むから・・・・・・今から下に行って会見するけど、ギルの事もあなたの事も私は絶対に言わない。勿論このお腹の子供の事を知っているのは、ギルとあなたと私と・・・・マネージャーだけ。生れて落ち着くまで海外にいる予定なの。だから、今日その挨拶をするためにギルの所に来たの。」
スアは見逃さなかった。
ミニョンの目が涙で潤んでいるのがはっきりと判った。
ギルの首に手を回し、背の高いギルに合わせる様に背伸びをして最後のキスをした。
「ごめんね、ギル・・・・・」
ミニョンが離れて背を向けると、いつもと同じ香りが長い髪から漂った。
その香りは、二人が付き合った記念にギルが買った安いフレグランス。
ギルはミニョンがまだ自分を愛しているばかりではなく、自分もまだミニョンへの愛が消えていない事に気が付いた。
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