言えない恋じゃないけれど(スア) 43
ミニョンが去って行った方を、ただ見ているだけで動こうとしないギル。
いくらまだ子供でも、多少人の気持ちは判るつもりでいる。
「追いかけないの?」
「ふっ・・・・・子供のスアに言われるとは・・・・・」
「だって、ギルさんはまだミニョンさんの事を好きなんでしょ?寝室だって、ミニョンさんと暮らしていた時のままだったし・・・・」
「好きだよ。確かにまだミニョンの事は好きだ。」
気が付いていてもギルからその言葉を聞くと、胸が苦しくなってくる。
好きならどうして追いかけないのだろう。
ミニョンもまだギルが好きだと言う事は、初めて対面したスアにも気が付いていた。
「いいんだ・・・もう終わったから・・・・・」
「でも・・・」
「オレは子供を望まなかった、ミニョンは子供を望んだ。それにオレはミニョンに酷い事を言ったからな・・・・・・・ミニョンが今日ここに来たのじゃなくて、オレが呼んだんだ。記者が付いて来る事は予測していたし、あの中にオレが務めている出版社の人間もいるはず。いてもオレだとは書かないだろうし・・・・・・・・オレが一緒に住んでいた事を隠すようにしてしまったからな・・・・・ミニョンを誰にも渡したくないから。」
それならなぜ追いかけないのだろう。
私はこんな風に小さくなって座っているギルさんじゃなくて、いつも大きく口を開けて大きな声で笑っているギルさんが好き。
「ねえ・・・・」
「ん?いきなりタメ口か?」
「私と恋人になって!」
「はは・・・・スアと恋人になったら、おじさんに殴られそうだ。」
「私、後悔しないから・・・・それにアレを見つけたの。」
「アレ?」
「うん・・・・ベッドの所にあったの・・・・・」
ギルは一瞬何の事か判らなかったが、ミニョンと暮らしていた時に用意していた物の事だと気が付いた。
「あ・・・あれは・・・・・・古いから捨てるよ。」
「新しいのを買ったら、恋人にしてくれる?それとも・・・・・今なら大丈夫。妊娠はしないから。」
「ミニョンのそれに騙されたから・・・・・それに新しいのは買わないし、スアとは何もしないよ。」
「したじゃない・・・・・今までに何度か・・・キスを・・・・・」
子供だと思っているスアの、いたずらっ子のような表情に言い返す事も出来ない。
「いつかな・・・・・」
「いつかって・・・いつ?」
「そんなこと約束出来ないよ。そうだな・・・・スアが大学を出て・・・・・・」
「大学を出て?」
「その時にオレがミニョンを完全に吹っ切れて、スアがまだオレの事を好きだったらな。」
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