あなたに逢いたくて 50
ハニは手を振りながら走って来るミナ達の姿を確認して、お互い元気で過ごしていた事と変わらない笑顔に懐かしんだ。
「スンハちゃん、こんにちわ。」
「アンニョン」
スンハは、ハニによく似た笑顔で三人にニッコリと笑って挨拶をした。
「可愛いのぅ~。スンハや~、ワイがアッパやでぇ~。」
一時は、ハニのお腹の子供なら自分の子供と同じだと言って、ハニと結婚しようとしていたジュングは、ハニが産んだ子供と言うだけで無性にかわいく思えてスンハを見て目尻を下げた。
好きなハニを捨てたスンジョの子供であることは判っていたが、それよりもハニが産んだ子供だと言う事だけで父親が誰なのかどうでもいいと思っていた。
「ジュング!スンハちゃんに、変なこと教えないでよ。」
「しかし、笑った顔はハニに良く似てると言うよりもソックリやなぁ、ペク・ス・・・ウググ・・・・」
ジュリがジュングの口を塞ぎ、ミナが咳払いをしてジュングがしゃべり過ぎるのを止めた。
「皆、気を使わなくていいよ。この間、私の大学にパラン大医学部教授に同行して来たスンジョ君を見かけたの・・・・元気そうで安心したよ。それにもうスンジョ君のことは忘れたの。」
ミナは皆の前で、心配かけまいとして無理をして笑っているハニが不憫に思え、初めて会う三人に緊張した表情でハニの後ろにいるジョンスの方に視線を移した。
「あなたが、キム・ジョンス先生ですか?」
ジョンスは、少し顔を赤くして頭を下げた。
「いつも、私達のハニがお世話をお掛けしています。私は美容師のチョン・ジュリです。」
それぞれ、簡単に自己紹介をしてジュングの用意した車に乗り込んだ。
車の中でミナとジュリは人懐っこいスンハを相手にしながら、運転席と助手席に座っているふたりに聞こえない様にハニにそっと話した。
「ハニ・・・・・・ぺク・スンジョに子供の事を話したほうが良いよ。」
ミナは無邪気な笑顔を見せ、自分の生い立ちも知らず、父親であるスンジョがその存在も知らないままで育っているスンハが不憫に思っていた。
「・・・・・・・」
何も言わないハニに、ジュリもジョンスがいるから言わない様にとしていたが、我慢しきれずにギドンから口止めされていたことを言いたくなって来た。運転するジュングも笑った顔がハニに似ていても、それよりもスンジョとよく似たスンハを見て、何時までも今のまま隠し通していてはいけないと思っていたが、男である自分よりもこの話はミナたちに任せ何も言わないでいようと、ハニを迎えに行く事になった時に決めていた。
「あのね・・・・おじさんに口止めされていたんだけど、ペク・スンジョ・・・・・ユン・ヘラと婚約破棄になったんだよ。」
「えっ?・・・・・・・・」
「あのペク・スンジョに、ヘラの方から断って来たんだって。ハニがソウルを出てから、ずっとおじさんにハニの居場所を聞いていたんだけど・・・・・・・」
「おじさん・・・・ハニは元気だから、としか言わないし・・・・・・・・その・・・・縁談がある・・・って・・・」
ジュリはチラッと助手席にいる、キム・ジョンスの方を見た。
「パパが?・・・・・・」
ハニはスンジョがヘラとの婚約が無くなったことを知り、胸が激しく脈打つのを感じた。
今までずっとスンジョを忘れようとしていたのに、口では忘れたと言っていたが心の中では忘れらる事は出来なかった。
秘密の恋をしていた時間に知ったスンジョの温もりも吐息も囁く声も、いくら忘れようとしても忘れられなかった。
淋しくて、苦しくて・・・・・眠れない日々を、スンジョによく似たスンハに触れて耐えて来ていた。
「ねえ・・・・・・連絡しなよ。今のペク・スンジョは、またハニと付き合う前のあの冷たい表情の読めない氷の王子に戻ったんだよ。」
ハニは、目から涙が溢れて来ても拭うことも出来なかった。
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