あなたに逢いたくて 51
「ミナ・・・・・・スンジョ君は、ヘラと結婚しなかったの?」
スンジョが結婚をしなかったことに、ハニは動揺を隠せなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・パパが内緒にしていたのなら意味があっての事だし、私がスンハと一緒にスンジョ君の前に出ても、邪魔になるだけだから・・・・・・スンジョ君はこれから立派なお医者様にならないといけないのに、結婚もしないで子供がいたなんて判ったら・・・・・・」
ハニは自分が正しいと思ったことは、どんなことがあっても自分を信じて進む。
今のハニはまだスンジョに会う勇気も心の準備も出来ていない。
結婚もしないのに子供がいたと判ったら、優秀なスンジョの将来に傷が付くと思っていた。
どんなに忘れようと努力をしても、一時もハニは大好きなスンジョとの思い出も温もりも忘れたことはなかった。
恋しくて恋しくて、淋しさと悲しさで声を押し殺して何度も泣いた夜もあった。
ウファ大学でスンジョを見かけてからは、殆ど夜は寝付けることが出来なかった。
ジョンスは、自分の入ることの出来ないハニたちの会話を黙って聞いていた。
ペク・スンジョ・・・・・・・テハン大に来るはずだったIQ200の天才。
何かトラブルが遭って、パランに入学したことがテハン大でも有名だった。
ジョンスがまだ学生の頃に、各学部で待っていた天才が来ない事になったと言う話は構内でも誰もが勝手な事を想像して噂をしていた。
好きな女の子と同じ大学で勉強をしたいらしいとか、小学校からパランで過ごしていたため大学側が放さなかったとか・・・・・・・
彼がハニさんの好きな人なら、僕にはとてもそんな二人の間に入る隙などない。
噂がどうであれ、もしそれが事実であったのなら、そんな彼に思われているハニさんは、何を躊躇して結婚をしていないと聞いても彼の前に出ないのか・・・・・・
自分が彼の邪魔になると思っているのかもしれないけど、ハニさんがいなくなって変わってしまった彼の事を考えると、二人はお互いにお互いを思い過ぎているのではないのだろうか。
と、ジョンスは思った。
車は懐かしいギドンの店の前に着いた。
「スンハ・・・起きて・・・・おじいちゃんのお店に着いたよ。」
長旅に疲れて眠っていたスンハを起こしていると、開いた店のドアから初孫に会えることに嬉しくて仕方がないと言う顔のギドンが出て来た。
ジョンスは後部座席の車のドアを開けて、ハニに抱かれているスンハを受け取った。
その様子はまるで若い家族のようで、ギドンはそんな三人の言葉にしなくてもいい自然な気持ちが通じている絆を感じた。
「スンハ・・・おじいちゃんだよ。」
初めて会うギドンの顔をキョトンとして見ていたスンハは、可愛らしくニコッと笑ってギドンに挨拶をした。
「おじいちゃん?アンニョン。」
初めて対面する可愛い孫にギドンは目を細めて、ククスを作り続けてきたゴツゴツした手で柔らかなスンハの頬を触った。
スンハに続いて、ハニが車から降りてきた。
「パパ・・・ただいま。」
「お帰り、ハニ。」
二年ぶりに見る最愛の娘ハニは母親になり、早くに亡くした自分の妻によく似て来たと思った。
そんな家族の幸せそうな様子を遠くから伺っている人影があった。
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