あなたに逢いたくて 52
「あら?ギドンさん、珍しくお客様のお出迎えをして見えるわ。特別なお客様かしら・・・・」
グミは車から降りて来た大人しそうな男性客と、それを緊張した顔で何か話をしながら出迎えているギドンの姿を見つけた。
その男性はギドンと挨拶を済ますと、後部座席のドアを開けて車の中から一~二歳くらいの幼い女の子を受け取っていた。
女の子の母親はその時は手だけが見えたが、どんな女性が乗っているのかは遠目には確認は出来なかった。
「スンハ・・・・・・・おじいちゃんだよ。」
えっ?おじいちゃん?
「おじいちゃん?アンニョン」
まさか・・・・・あの子は・・・・・・・
グミが車の後部座席の方を見ていると、暫くしてハニが体をかがめながら車から降りて来た。
久しぶりに見るハニは最後に見た頃よりも、三年近く経っているからなのか少し大人っぽくなって見えた。
どういうこと?ハニちゃん、その子はスンジョの子供なの?
それとも・・・・・・その男性と結婚して産まれた子供なの?
スンハを抱いている男性を観察をするように見ると、幼い子供の扱いに随分と慣れているのか、そのスンハと言う名前の小さな子供は、男性を見る顔は父親に甘えたような表情をしていた。
でも・・・・あの子供は、スンジョの子供よね。
あのくらいの頃のスンジョと、とてもよく似ているわ。
あの男性は誰なの?ハニちゃん・・・・・
スンジョはユン会長の娘との縁談は破談になっているし、ずっとハニちゃんを忘れないで探しているのよ。
もうスンジョとは一緒になる事は出来ないの?
あなたを私の娘にすることをずっと夢見てきたのに・・・・・
スンジョの婚約が無くなってからは、ハニちゃんが見つかったらいつでもすぐに結婚が出来るように準備をしていたのよ
ダメよ・・・・こんな事で引き下がったりしたら、スンジョとハニちゃんを結びつけるために、あなた達が出会ってからずっと追いかけていたファン・グミの名が廃るわ。
「パパ・・・こちら、診療所に赴任して来ているキム・ジョンス先生よ。看護師の試験の勉強もずっと見てくれていたの。」
ジョンスは緊張しながら、ペコリと頭を下げてギドンに挨拶をした。
「初めまして・・・キム・ジョンスです。ギミさんとハニさんにはいつもお世話になっています。」
「こちらこそ・・・・ハニは頭が悪いから教えるのも大変でしょう・・・・・さあ、座ってください長旅で疲れたでしょう。今、軽い食事を用意しますから。ジュング、厨房に入れ。」
ギドンはジュングに声を掛けて、二人で厨房に入っていった。
「ジョンス・・・・じょぉ~ずに、言えたね?お利口さんでしゅ。」
小さなスンハに頭をなぜてもらい照れているジョンスと、それを見ていたハニ・ミナ・ジュリはその光景にどっちが子供で大人なのか判らないと言って、可笑しくて笑っていた。
店内に笑い声が響いているその時、店のドアが勢いよく開いてグミが入って来た。
「ペク・スンジョのお母さん・・・・・・・」
ジュリの言葉にハニは心臓が止まるほど驚いて、入り口の方を恐る恐る振り返った。
「ハニちゃん・・・・・・その子は・・・・・」
「お・・・・・おばさん・・・・・・・」
何も知らないスンハは、いつもハニに≪人に会ったら挨拶をするように≫と教えられていたようにグミに可愛らしい笑顔を向けて挨拶をした。
「アンニョン、スンハでしゅ。」
店のドアが開いた事に気づいたギドンも厨房から現れ、グミにスンハを診られて動く事が出来なくなったハニとグミの間に入ろうとした。
「おばさん・・・・・・私・・・・・・結婚したんです。」
「でも、その子はスンジョの子供でしょ?スンジョの幼い頃とソックリ・・・・・・・」
以前のハニならこんな時は父親を頼っていたが、一人で子供を育てる決心をしたハニは違っていた。
「キム・ジョンス・・・・私の主人です。おばあちゃんの紹介で、おばさんの家を出て暫くしてから結婚したんです。・・・・・この子は・・・・・彼の子供です。スンジョ君の子供ではありません。」
顔色も変えず、詮索されることを拒むような表情で言うハニに、グミはずっと探していたハニがもう自分の傍でよく笑っていた頃のハニとは違うように思えた。
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