あなたに逢いたくて 53
グミにスンハのことが判ってしまった以上、きっとスンジョにも判ってしまうのも時間の問題・・・・
グミはまた来ると言って店を出た後、ハニは緊張の糸が切れたのかその場に崩れるようにしゃがみ込んだ。
「ハニ・・・・大丈夫?」
青い顔をしてしゃがみ込んだハニを心配して、ミナとジュリが聞いて来た。
ジョンスに抱かれているスンハも、大人の事情が理解出来なくても、突然の訪問者と母親のハニのいつもの様子と違うことに驚いて泣き出してしまった。
ジョンスは、スンハをあやしてはいるが、自分を見てくれない母親を見て悲しくて仕方が無いようで、とても泣き止みそうもなかった。
「キム先生、あの・・・・二階にハニが使っていた部屋があります。長旅で疲れたのもあって泣き止まないのでしょう。ベッドが置いてあるからそこにスンハを休ませてもらえないかね。ハニはワシが見ているから。」
「お願いします・・・・スンハちゃんもきっとその方がいいと思うので・・・・・・」
何も知らないまだ幼いスンハを、内緒にしていた母親の秘密に巻き込んでしまったことに、ハニはこれからの事をかんがえて、スンハをペク家採られてしまうのではないかと思い込み動揺を隠せなかった。
「ハニや・・実はなお前に隠していたが・・スンジョ君は、オリエントコーポレーションのお嬢様とは結婚しなかったんだ・・・・・」
ギドンはしゃがんで泣いているハニを抱き上げて、近くの椅子に腰掛けさせた。
「・・・・・うん・・・・ミナ達から、聞いた。」
「グミさんに判ってしまった以上、隠し通すことは出来ないし、スンジョ君にも話した方がいいのじゃないかな?いくらハニがスンジョ君の子供じゃないと言っても、スンハはキム先生やハニよりも、誰が見ても父親であるスンジョ君によく似ている。ずっとハニに会いたがっていたグミさんが、ペク家の嫁と孫として認めたいからと親子鑑定をしないとは限らないだろう。」
ハニはそれでも嫌だと言うように、泣きながら首を横に振り続けた。
「ダメ・・ダメ・・・スンジョ君は立派なお医者様になるんだから・・・鳴らないといけないの・・・・私やスンハが表に出たら、スンジョ君の邪魔になるに決まっているんだから。スンジョ君は・・・・もっと私よりも頭が良くて素敵な女性(ひと)と結婚して、それから・・・・・・・・」
ギドンでも説得が出来ない程、頑ななハニの心を溶かす人は、ここにいる誰にも出来ない。
スンジョのことを思い、自分とスンハは絶対に出会ってはいけないと思っていた。
「ウンジョ・・・ママはどうしたんだね?」
スチャンは家に帰ると、いつもならすぐに食べられるようにと食事の用意がされているのに、テーブルの上にはカトラリーが並べられるどころか、下ごしらえも何もされていないことに不思議に思った。
「ママね、何だか真っ青な顔して家に帰って来たんだ。どこか具合が悪いみたいだから、さっきお兄ちゃんに電話したよ。きっとパパは今日も家に帰って来るのが遅くなると思っていたから。」
デリバリーのピザを食べながら一人淋しくウンジョは、形だけの夕食を摂っていた。
「ママ・・・・入るよ。」
スチャンが寝室のドアを静かに開けて中に入ると、グミは肩を落としベッドの端に腰掛け、両手で顔を覆って震えていた。
「ママ・・・泣いているのか?」
グミは涙を拭いながら、顔を上げてスチャンの方を見た。
「パパ・・・・・・ハニちゃん・・ハニちゃんにスンジョは本当にとんでもなく大変なことをしたの。私たち親として、いったいどうしたら良いの・・・・・・」
そう言って泣くグミをスチャンは優しく抱き寄せた。
「泣かないで、何のことかよく判らないけど、順を追って話してごらん。」
「ハニちゃんね・・・・・スンジョの子供を産んでいたの・・・・・・絶対あの子はスンジョの子供だと思うの・・・・・・・だけど・・・・違うって・・・・スンジョの子供じゃないって・・・・ソックリだったの、スンジョの幼い頃と・・・・・スンジョの母親の私がそう言っても、一緒に来た男性と島に行ってから直ぐに結婚して産まれた子供だって・・・・・・」
「一緒に来た男性?」
グミはいつものようにハニの所在を聞き出そうと、ギドンの店に行った時の様子をスチャンに話した。
グミがスチャンに話し始めたその頃、丁度スンジョが家に帰って来た。
「ウンジョ、ママは?」
「寝室にいるよ。さっきパパが帰って来てママの様子を見に行ったよ。」
スンジョはカバンをリビングのソファーに置くと、夕食の支度もしていないからグミの体調を心配して両親の寝室に向かった。
少し開いたドアから聞こえる両親の会話。
両親の部屋のドアをノックをしようとした時、スンジョの耳に父スチャンの話が聞こえて来た。
「ハニちゃんが違うと言うのに、それはいけないよ。ハニちゃんは心が深く傷ついてしまったのだから、ハニちゃんが自分から言い出すまでそっとしておいてあげよう。それまではこの事はスンジョにも言わないようにしておかないと。スンジョがしてしまった事で、ギドンたちにも随分と負担を負わせているのだから、ワシらの方からは言える立場じゃないのだからね。スンジョには秘密だよ。」
「親父・・・・・ハニが・・・ハニがどうかしたのか?」
スチャンとグミは、いつの間にか部屋に来ていた事にビックリして、スンジョの声がする方を見た。
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