言えない恋じゃないけれど(スア) 45
「泊まって行く?はっ・・・・・大人をからかうなよ。」
「からかっていないよ・・・・それに高校3年は大人だよ。おばあちゃんは高校3年の時におじいちゃんと知り合って、高校卒業を待って結婚したの。だから、お嫁さんに貰って欲しい・・・・・ううん、本当の恋人にさせて。」
「だめだ。」
「どうして?」
「責任が取れない・・・・・・・」
「責任取れなくてもいいから・・・・」
ギルは、今日に限って何か焦っているようなスアの気持ちが気になった。
ノートパソコンを静かに閉じて、椅子をクルッと回転させてスアの方を見た。
「夕食を食べたら送って行くよ。」
「嫌!今日泊まるつもりで着替えも持って来たの。」
スアが指をさす方に、小さめのキャリーバックが置いてあった。
部屋に来た時から、スアの顔を見ないでパソコンのモニターを見て、スアが話しても上の空の返事をしていた。
「送って行くよ。それが嫌なら、オレがこの部屋を出て行く。」
「どうして・・・・いつもと違ってどうして私を帰したいの?いつもは・・・いつもは・・・・・キスはしてくれていたのに・・・・・」
ギルはスアに軽い気持ちでキスをしていた。
スアと深いつながりになれば、ミニョンを忘れる事が出来る。
ミニョンに言われた事を思い出しながら、スアを好きになろうとしていたが、そうなれなかった。
「昔・・・ミニョンに言われたよ。」
「ミニョンさんに?」
「スアとスングの写真を見せて、10歳年齢の違うお袋の親友の双子だ・・・・・スアはミニョンに似ている。でもミニョンもスアの様に明るくて元気ならいいのに・・・と言ったことがあった。あまりスアのことを良く言うから、ギルは私よりもスアが好きなんだと言って喧嘩をしたことがある。」
「ギル・・・・・」
「あの時は、本当にスアが好きだと思っていたし、ミニョンが出て行った後にスアと公園デートをした時はスアが好きだと思っていた。」
次の言葉は聞きたくない。
ギルが何を言っているのか判るから。
でも、私のギルへの思いは止められない。
「スングにギルと付き合っていると言ったの。高校を出たらギルのお嫁さんになりたいの、だから・・・・・・」
「ゴメン・・・・出来ないよ・・・・スアの思いを受け止められない。」
ギルの右手薬指に光るミニョンとのペアリング。
いつも以上にスアの目にははっきりと写っている。
「ミニョン・・・・・・・・昨日の夜から陣痛が始まった・・・・・ミニョクの時もオレは付いていてやれなかった・・・今回はお袋のインタビューの記事を纏めるから付いていてやれないと言った・・・・・・」
ギルは立ち上がって、麻のジャケットをフワッと羽織った。
「記事の原稿は今会社に送ったから・・・・・・病院に行くよ。お袋が病院でミニョンに付き添っているんだ。ゴメン・・・・・オレはミニョンに酷い事をしたから許してもらう事は出来ないが、それでも今度の子供が生まれる時には傍にいてあげたい。間に合わないかもしれないけど・・・・行くよ・・・・・」
行って欲しくないと言うスアの想いが、ギルの動きを止めた。
ビリッ!!
「止めるんだよ・・・・スアはそんなことをする子供じゃないだろ?」
スアは引き千切るようにして、ブラウスの胸元を開いた。
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