言えない恋じゃないけれど(スア) 46
「止めるんだ・・・スアは羽目を外さない子だろ?」
「私だって、羽目を外す事だってあるわ。ギルはミニョンさんと終ったんでしょ?」
「・・・・・・・それを離すんだ・・・・・・」
白い喉元にペティナイフを当てた。
「好きだっていてくれたのに・・・・・・キスだって沢山してくれたのに・・・・」
こんな事をしても無駄だと判っていた。
最初っからスアの片想いで、ギルが好きだと言ってくれた事はミニョンを忘れるためだと言う事は判っていた。
自分を傷つけても意味が無い事も判っていた。
「スアのその白い肌にペティナイフは似合わないよ。
それをオレにくれないか?自分の身体を自分で傷つけて欲しくない。」
引っ込められなかった。
手を伸ばした所に、ペティナイフがあったからそれを思わず自分の喉元に当てた。
ブブ・・・・・ブブゥ~
ギルのズボンの中に入っているスマホが、電話の着信をバイブで知らせていた。
ギルはスアの顔を見ながら、スマホに応えた。
「お袋?・・・・・・え・・・・ミニョンの血液型・・・・・・オレと同じだから、お袋とも一緒だ・・・・・原稿書き上げたからすぐに行くよ。」
「どうしたの?」
「ミニョンが・・・・陣痛が酷くて意識を無くした・・・・・・緊急手術になったんだ・・・・お願いだから、そのペティナイフをオレに渡して、病院に行かせてくれ・・・・頼むから・・・・」
子供じみたことをして、ミニョンに何かあればギルを完全に失う事になる。
自分の言う事を聞いて貰うために駄々を捏ねて、ミニョンさんを苦しめてはいけない。 ミニョンさんは、ギルの事を大切に想っているから、自分のせいで傷つけたくないから、有名人ではない私に譲るつもりだった。
本当にギルが嫌いで別れるのなら、亡くなったミニョク君の代わりにと生れてくる子供を代わりにはしないはず。
ギルから離れる決意をしたのも、会見で父親の名前は明かさないと言った事も、一般人のギルを守るため。
そこまで私はギルの為に自分を犠牲に出来ないし、守れるほど大きな愛ではない。
ただ小さい時から知っている、スンリ兄さんやスンスク兄さんとスンギ兄さんと同じように好きなのかもしれない。
スアがペティナイフをテーブルの上に置くと、ギルが玄関に行けるようにその場所を開けた。
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