言えない恋じゃないけれど(スア) 47
時間外の入り口から、薄暗くなった廊下を出来るだけ早く歩いていた。
3年前のあの日は、小さな病院でミニョクを生んだ。
キエにだけ話して、お袋や親父にも内緒で・・・・・
誰にも祝福を受けなかった可哀想なミニョクは、わずか半年で逝ってしまった。
ミニョンがミニョクを亡くして傷付いたのに、オレはその傷を癒すどころか更に深くしてしまった。
「ギル・・・・・おじさんが、今・・手術室に入ったから・・・・」
「ミニョンには会えない?会いたい・・・・・・ごめんと謝りたいよ・・・・・」
「これ・・ミニョンの陣痛がまだ軽い時に預かったの。結婚してあげて・・・ちゃんと今度は生れた子供も世間に披露させてあげて。」
ミニョンの手紙は謝りの言葉ばかりだった。
ギルが大切にしていたミニョクに、可哀想な事をしてごめんなさい。
今度生れる子供は、私がちゃんと育てるから、勝手に生むことにしてごめんなさい。
スアちゃんと、幸せになってね。
私は、ギルの子供がいれば幸せだから。
ごめんね・・・・・
手術中のランプが消えて、スンジョが姿を現した。
「おじさん・・・・・・・」
「生れたよ、男の子だ。ミニョンは術後の処置が終わったら病室に行くから待っていてくれるかな?特別室を用意してあるから、君のお母さんが部屋を知っている。」
「ありがとうございます。」
パラン大医学部の教授とお袋が知り合いだから優遇してくれたのだろう。
特別室に行く前に、生れたばかりの息子と対面した。
ミニョクとよく似た顔をしていた。
まるでその顔は、アッパとオンマが仲良くして欲しいと言っているようにも見えた。
「かわいい子ね・・・ミニョクもこんな顔をしていたの?」
「よく似ているよ。」
「あなたがスアと最近仲がいいと聞いてはいたけど、本当の気持ちはどうなの?小さい頃から妹が欲しかったと言っていた気持ちじゃないの?」
「そうかもしれない・・・スアにも悪い事をしたと思っている。いい加減に付き合っていたわけでもないけど、スアといる時は子供に戻った気がしたよ。それは後悔したよ。」
「ミニョンと暮らしていた事やミニョクが生れていた事とその子供がすぐに亡くなったことを。ミニョンも苦しかったと思うわ。キエから話を聞いたけど、ミニョクの時もツワリが酷かったって・・・・・不安だったのよ。ミニョンにしたら仕事よりも、あなたからのプロポーズがきっと欲しかったと思うわ。今回はキエが教えてくれたから、大事に至らなかったけど、女一人で仕事をして子供を育てるのは並大抵の努力じゃないし、ましてやミニョンは不規則な仕事に子供を気にしながら仕事をしていたらミニョクと同じ事になりかねないわ。あなたが堕ろせと言った気持も判るわ。彼女の仕事が無くなることを気にしているって・・・・・」
静かに開いた病室のドアから、麻酔が効いたままのミニョンが部屋に運ばれて来た。
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