言えない恋じゃないけれど(スア) 51
隠しているつもりだった。
してはいけない恋愛で、あの時のまふたりはだ小学生だったけど、スンミがバレエ教室の先生とのことで、両親が大変な思いをしていたのもなんとなく知っていた。
「いけないよ、キエさんは結婚しているから。オンマとアッパを悲しませないで。」
「判ったようなこと言うなよ。確かに双子だからオレに悩みを話せとは言ったけど、オレはキエさんの事で悩んでいないし、キエさんは子供が生まれたら離婚すると言っていた。オレが大学を出てちゃんとキエさんとキエさんの子供を養えるようになったら結婚するつもりだ。」
「何を考えているのよ。そんなことを考えていたら、スングのせいで離婚したことになる。」
「オレのせいになるならそれでいい。キエさんさえ守れれば・・・・・・」
バシッ! 静かな空間に響く、頬を打つ音。
スングの頬にスアの手の跡が赤く残った。
「そんなことをしたら、アッパとオンマが悲しむ・・・・あんなに幸せな両親を悲しませたらダメ。スンミ姉さんの時にアッパがあんなに可愛がっていたスンミ姉さんを遠い診療所に入れたでしょ?オンマだって毎日に泣いていたじゃない。」
「もう寝るぞ・・・・・明日は模試前日だ。最近インハに抜かれているから取り戻せ。」
言い訳だ。 スアはインハに抜かれたと言っても、数点だけだ。
自分でも判っている。
人として結婚している人を好きになってはいけないと。
「誰かシャワーを使っているの?」 お母さんだ。
「スング・・・さっきまで本を読んでいたんだ・・・・・今病院から帰って来たの?」
「そうよ。お父さんも一緒に帰って来たわ。シャワーから出たら冷たい物を飲めるように用意しておくね。」
お母さんは結婚して30年以上も経っているのに、いつまでも恋人のようにお父さんと一緒にいる時は楽しそうだ。
孫もいるのに二人は、どうして何年も高校生のカップルのように新鮮に見えるのだろう。
両親が並んで座るリビングのソファー。
正面から見るといつも無関心な顔でいる父と、甘えたような表情で父の方に頭を預ける母。
後ろから見れば父の片手は母の身体をしっかりと支えている。
「お帰りなさい。」
「夢中になるほど何の本を読んでいたんだ?」
「歴史書・・・・・」
「凄い難しいのを読んでるのね。お母さんはいまだにそう言う本を読むと眠くなって・・・・・」
お母さんの愛読書は、アイドル雑誌。 家の中でアイドルの情報に詳しいのはお母さんが一番で二番目がスア。
スンハ姉さんは生まれた時には結婚していたからどんな本を読んでいたのか知らないけど、スンミ姉さんは美術書が好きだった。
「大学の進路はどうするんだ?もう希望は提出するのだろ。」
「医学部に・・・海外の大学の医学部に行こうかと・・・・・・」
「海外?行っちゃうの?どこ?どこどこ?」
「日本・・・・・智樹おじさんがいるから・・・・ダメかな?」
「いいよ。智樹の家に下宿して行くなら心配ない。」
日本の大学に行って、向こうにキエさんを呼んで一緒に暮らすんだ。
ここにいたらきっとキエさんは人の噂の的になるから。
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