言えない恋じゃないけれど(スア) 57
「言わなかったよ。自分の気持ちを伝えたのは、前の婚約者がミラを心から愛していないと分かっていたから。」
前の婚約者とのことは、兄さんからもお父さんからも聞いた事はないけど、大人しい兄さんが勇気を振り絞ってプロポーズしたのだからよほど酷いことがあったのだろうな。
「スングの好きな人は、年上なの?」
「10歳上・・・・・」
「それがキエさん?」
穏やかなスングの顔が教師の顔になり、厳しい表情になった。
「キエさんはダメだ。年上すぎるし、既婚者で子供も生まれる。相手の男性は、地位もある人だしスングとの事が判ったら大事になるよ。キエさんはどうか知らないけど、相手の男性はキエさんに一目惚れだから。」
どうして兄さんはそんなことを知っているのだろう。
キエさんの旦那さんとは仕事での付き合いも無いのに、どこで接点があるのだろう。
「不思議に思っているんだろう?キエさんの旦那さんと、偶然に教師の集まりで飲食した時に、二人が一緒にいる時に偶然に会ったんだ。それもトイレで・・・・・・・クスッ・・・・キエさんが僕を幼馴染と紹介したから、トイレで初めて話をした。年が離れているから、どう接していいのか判らないし、仕事が遅いから結婚しても寂しい思いをさせるかもしれないって。」
勝ち目はないよな・・・・
経済力が無いどころか、まだ学生でそれも高校生。
キエさんがオレの事が好きだと言っても、旦那さんがいて夫婦として生活をしているから妊娠した・・・・・ オ
レは何を考えているんだよ。
欲求不満か?
「スアもスングも、よくミナおばさんの所に行っていたから、話をする機会も多いと思うけど、兄として教師として言うのなら、自分の年齢に合った相手と結婚した方がいいよ。年上のミラと結婚した僕が言うのはおかしいけど、ミラはずっと気にしていたから・・・・僕よりも年上だと言う事を。でも、今は僕の方がミラの歳を随分と追い越したけどね。」
いつまで経っても来ない父の様子が気になって、そっとフィマンが顔を覗かせた。
去年お見合いをしたのに、今でもミラさんを想って再婚もしないで二人の子供と、ミラさんの思い出のある部屋で生活をしてる。
兄さんの様に、若くても気持ちが大きな人になるにはどうしたらいいのだろう。
「フィマンを寝かせないといけないから、もう部屋に行くよ。スングも少し距離を置いて、キエさんとの事を考えてみた方がいいよ。」
穏やかな兄と話をしていると、少し違ったふうに考えてもいいかという気持になった。
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