言えない恋じゃないけれど(スア) 58

「帰って来てくれたの?」

 「社員が『自分たちに任せてくれ』と言ったから。代行を呼んだのか?」

 「運転が出来そうもないから・・・・・・」 

キエの夫は、ジャケットを脱ぎネクタイを緩めカッターシャツの袖のボタンをはずし腕まくりした。

 「何か食べる物でも作ろうか?」 

「食べられない事を知ってるじゃない・・・・だから点滴に通ってるのよ。」

 「そうだったな・・・・・それでも何かこれなら食べられそうとか・・・・・・・」

 仕事を社員に任せて帰って来てくれたことは嬉しかったが、さっきまでここにいたスングを思うと今は夫と話をする気も無かった。 


「ねえ・・・・離婚して・・・・・」

 「ツワリだけで離婚はしなくても。」

 「あなたを愛せない・・・・・いい人だとは判ってる。真面目だし仕事熱心で・・・私に優しいし。」 

フラフラとしながら歩いているキエを、夫は走り寄って支えた。

 「ツワリで気持ちが揺れているんだ。生まれて子供がある程度外に連れて行けるようになったら、ハワイかどこかに暫く行って来よう。随分旅行もしていなかったし。」

 「気持ちが揺れている訳じゃないわ。ずっと好きな人がいたの・・・・あなたと結婚したら忘れられるかと思っていたけど、忘れられない。」 

キエの夫は決して怒鳴ったり、それを止めたりはしない。

 優し過ぎるくらいに優しくて、それがキエには辛かった。

 自分の事を溺愛している夫よりも、もっと叱ってくれる人であって欲しいと思っていた。  


「このお腹の子が自分の子供ではないと思ったことはないの?」 

「思わないし、キエの子供なら私の子供だから、その子の父親として一生養う事は当然の事だ。」 

どうして・・・・どうしてこの人はこんな事を言っても怒らないの? 「怒ってよ・・・・・・」

 「キエ・・・・・」 

「『それは本当か?相手は誰だ』って・・・・怒ってよ・・・・・」

 どんなに私が一人で騒いでも、子供を扱うように抱きしめるだけ。

 専業主婦は嫌じゃないけど、どんなことをしてもこの人は私を許してしまう。

 大学時代のギルの友達と二人で飲んでも『よかったな』『楽しかったか』と聞くだけ。 

信用しているのか、馬鹿にしているのか。 


「キエが離婚したいと言うのは、私が仕事が忙しいからだろ?今の取り組んでいる仕事が終わったら、子供が生まれるまで在宅で仕事をするから。

 良い人過ぎるから、私は刺激のあることがしたいの。 それが、スングにキスをいきなりしたり、抱き着いたり・・・・・ 「

私ね・・・・年下の男の子と不倫をしたの・・・・・」 さすがのキエの夫もその言葉に、顔色を変えた。 


ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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