言えない恋じゃないけれど(スア) 60
『学校帰りに、検査入院で病院にいるおばあちゃんの所に行って来て』
お母さんに言われて、スアとインハと三人で向かった。
「スアとスングはオレのおばさんにおじさんなんだよな。」
「何よ、今更・・・・・・」
「お前オレとスアの事を叔父叔母と思っていないだろう。」
「思えないだろう。時間差で同じ日に生まれたから。お袋が仕事に行く時は、おおばあちゃんの所に預けられていたから、よく三つ子に思われたよな。おおばあちゃん、90歳近くになってもいつも元気だったからな。」
クラスの何人かは、お母さんの具合が悪いとか、お父さんが入院したとか言っていた。
オレの家はお父さんが医者でお母さんが看護師だから、運がよく大病を患った人はいなかったけど、どんなに健康でも年齢にはかなわない。
病院内の廊下を三人で歩くと、スアとは似ているが微妙に似ていないインハとスングを見比べて、すれ違う人たちはコソコソと話をしていた。
「三つ子だ。」
双子や三つ子が珍しくはない時代だが、それでも目の前で見ると珍しく思うのだろう。
でも、オレ達は三つ子ではない。 こんな風に言われても、今までも言い返したことも無いし、これからも言い返す気が無い。
「スング、キエさん・・・・・」
スアに言われて顎で指し示す方を見ると、夫と一緒に産科の待合室に座っていた。
並んで座っている姿を見ると、スングは胸元をギュッと掴んだ。
時々吐き気がするのか、優しい顔をしたキエの夫は背中を擦っていた。
「キエさん、旦那さんに付き添われて病院に来たんだね。なんだかんだと言っても夫婦なんだよ。スングも諦めたら?」
「うるさい。余計な事を言うなよ。」
話に割り込まないインハだが、スアの言った事に興味があるような顔をしていた。
入院をしているグミの病室に行くと、検査の際中だったのか看護師が採血をしたり心電図を取ったりしていた。
仕事をしていた母の代わりに、スアとインハの世話をずっとしていてくれた。
スアもギルさんとの事があった時、おばあちゃんに相談をしたらしい。
おばあちゃんから、オレ達の両親が結婚に至るまでの話を聞いて、自分の孫たちには辛い恋はして欲しくないと言っていた。
ポケットの中の携帯にメールが届いたのか、バイブの振動が伝わって来た。
グミと話をしているスアとインハに判らない様にメールを見ると、キエからの短いメール。
今、病院に来ているけど、スングも病院?
チラッと姿を見かけたけど、会えるかな・・・・・・
旦那は、仕事で戻ると言っていたから、どこかでお茶して行かない?
出来るだけおばあちゃんの傍にいてあげてと、お母さんから言われていたけど、オレはキエさんに会いたい。
0コメント