言えない恋じゃないけれど(スア) 63
今は病室に誰もいないはず。
少し前に点滴が終わったから、スンハ姉さんは出て行っている。
辺りを見回して、一回二回とノックした。
「はい、どうぞ・・・・・・」
意外と元気そうなキエの声。
少しだけドアを開けて、本当に病室に誰もいないのか確認をした。
「入っていらっしゃいよ。」
入院着を着ているキエに、少し戸惑いながらスングは病室に入った。
病室の中は個室だからなのか、沢山の果物やジュースに花が置いてあった。
「授業はもう終わったの?」
「ああ・・・凄い数のお見舞いの品だ・・・・・・」
「旦那が持って来たの。こんなにいらないのに、病院の食事では補う事が出来ないからって・・・・・・・」
オレは、見舞いに来るのに何も持って来なかった。
ただ、キエさんの顔を見て励ますつもりでいた。
「優しいんですね・・・・・・」
「過保護なのよ。少しは強引にしてくれてもいいのに・・・・そうすれば・・・・・・」
「そうすれば?」
「何でもないわ・・・スングと沢山話をしたいけど、旦那がもうすぐ来るの。入院をすることが決まったら、仕事を従業員に任せて、朝昼夕方と来るのよ。夕方に来る時は、面会時間が終わるまでいるわ。」
以前の様に旦那さんを嫌がるような顔ではなくて、むしろ嬉しいような表情を浮かべている。
もしかしたら、キエさんは旦那さんとやり直すことになるのかもしれないと思った。
「どうしたの?」
「キエさん・・・・・・・・」
スングの目をしっかりと見つめるキエは、元々綺麗な顔をしていたが、とがった感じはなくなり柔らかな母の顔になっていた。
「6年後、オレと結婚してください。お腹の子供もちゃんと自分の子供として可愛がりますから。」
キエは何も言わなかった。
スングの事は本当に好きだが、結婚はただ好きなだけでは出来ない。
お腹の子供をスングが可愛がると言っても、もし離婚をしてスングと結婚して、また子供が生まれたら、父の違う兄弟になる。
スングが好きだからその子供の方を可愛がってしまったら、今お腹の中にいる子供が可哀想だ。
「スングは兄妹が沢山いて、スンハさんと21歳離れているよね。」
「?」
「その歳の差は永遠に縮まらない。スングが私と同じ年になったら、その時の私は今のスンハさんくらいの年齢。旦那は15歳上だから53歳・・・・・・・・・若いよね、スングはまだその時は29歳だから。スングは医者になるんでしょ?おじさんやおばさんみたいに学生結婚をすれば、適齢期とか関係なく過ごせる。でも、私と結婚をするとしたら、医師になる6年後ではなく10年後になるかもしれない。40近いおばさんとまだ20代のスングと並んだらまるで親子。きっと周りは私達の事は認めない。」
「オレが守るから・・・・・・」
その時病室のドアが開いた。
「キエ、その子は誰だ?」
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